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テーマ : 政治しずおか

表層深層=裏金処分目前 逃げの判断 二階氏、衆院選不出馬を表明 首相苦慮、責任波及を警戒

 自民党の二階俊博元幹事長が25日、次期衆院選への不出馬を表明した。派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、4月上旬にも関係議員の一斉処分を見込む自民。唐突に映る二階氏の判断の背景には「選挙での非公認」など、党主導の重い処分を回避しようとの思惑が透ける。影響力の強い重鎮の扱いに頭を悩ませていた岸田文雄首相は、自らの責任問題への波及を警戒しつつ、安倍派(清和政策研究会)幹部の処分に踏み切れるかどうかが問われる。

二階俊博氏を巡る岸田文雄首相の立場
二階俊博氏を巡る岸田文雄首相の立場


 「影響はない。自ら決めたことだ」。25日午前、党本部。記者会見に臨んだ二階氏は、党内で検討中の処分が判断に影響したかどうか問われ、気色ばんだ。だが実態は二階氏のメンツを保ちつつ、党内不和を抑え込む仕掛けを党幹部らが周到に準備していた様子がうかがえる。

 ・ブーメラン
 二階派(志帥会)は2018年から5年間で、政治資金収支報告書の収入と支出に計3億8千万円を過少記載したとして、元会計責任者が在宅起訴された。二階氏も、派閥パーティー券の販売ノルマ超過分3500万円を裏金化したとして、秘書が有罪となった。
 こうした事情から自民幹部は「肩書と金額、どちらで線引きしても重い処分は不可避」とみていた。ただ首相は周辺に「二階さんを処分したいわけではない」とも吐露していた。二階派を中心に恨みを買う上、岸田派(宏池会)でも元会計責任者が立件されており「ブーメランが飛んでくるのではないか」(官邸筋)と身構えたのだ。
 案の定、野党は25日、「責任者として、首相が真っ先に処分される対象だ」(共産党の小池晃書記局長)と批判のボルテージを上げた。

 ・円満演出
 「重い処分を受けるぐらいなら、その前にけじめをつける」。3月上旬、そんな二階氏の意向を耳にした二階氏に近い森山裕総務会長らが、軟着陸に向けて首相に働きかけを始めた。
 森山氏は7、15両日に首相と一対一で面会。処分内容を考えあぐねる首相に「組織的な裏金づくりをしていた安倍派幹部と同じ処分ではいけない」と進言し、区別するよう求めた。
 そこで浮上したのが、自発的な次期衆院選への不出馬表明だ。関係者によると、党紀委員会による処分で党員資格停止に次いで4番目に重い「選挙での非公認」と同じ意味を持ち、重い処分を下さない理屈も立つ。
 26日には関係議員への追加聴取が迫っていた。二階氏は25日朝、首相に電話して不出馬方針を伝達。首相は「熟慮の結果でしょうから、判断を尊重します」と敬意を表し、円満解決を演出した。

 ・世耕氏封じ
 「これで安倍派処分の線引きができた」。二階氏の会見を見届けた首相周辺は胸をなで下ろした。
 党処分の焦点は、裏金の発端や経緯に関し「知らぬ存ぜぬ」を貫き、責任逃れのような説明に終始している安倍派幹部だ。二階氏の不出馬表明で、選挙での非公認以上の処分を下せる流れになったと受け止めた。
 そして不出馬表明は二階氏にもメリットが生まれる。区割り変更に伴う次期衆院選和歌山2区には、二階氏と折り合いの悪い安倍派幹部の世耕弘成前参院幹事長がくら替え出馬を狙っているとされる。世耕氏が非公認や党員資格停止になれば、後継争いからの脱落は必至-。参院関係者は今回の決断を「世耕氏封じの一手だ」と読み解いた。
 処分を間近に控え、交錯する自民内の思惑と駆け引き。首相は25日夕の党役員会で二階氏の表明をこう評した。「党の再起を強く促す出処進退として重く受け止めたい」
自民総裁に「処分例なし」 首相  岸田文雄首相(自民党総裁)は25日の参院予算委員会で、派閥政治資金パーティー裏金事件を巡る自身への処分に否定的見解を示した。「党の歴史の中で、現職の総裁が処分された事例はない」と強調。安倍派などと異なり岸田派では議員側への資金還流がなかったとして「全く次元が違う。この点も踏まえ判断される」と述べた。
 日本維新の会の音喜多駿氏は「組織に致命的な問題が生じた場合、民間ではトップが責任を取るのが当たり前だ」と批判した。
 首相は、党から処分が下された場合の対応に関し「党の手続きや判断は尊重されなければならない」とした。一方で「信頼回復のため、党総裁として最大限努力を続けていきたい」と語り、辞任は否定した。
 関係議員に対する処分の在り方は「事実の把握や説明責任の努力を踏まえ、役職も考える」と説明。安倍派の前身の派閥会長を務めた森喜朗元首相を聴取するかどうかは言及を避けた。
 自民の茂木敏充幹事長の資金管理団体から、使途公開基準の緩い後援会組織への多額の資金移動に関し「法令にのっとっており、使途の隠蔽(いんぺい)と断じることはやや乱暴な議論だ。指摘があれば当事者が丁寧に説明することが重要だ」と語った。
最側近・林氏が会見の大半回答  自民党の二階俊博元幹事長による次期衆院選への不出馬記者会見は、最側近の林幹雄元幹事長代理が質問の大半に答える異例の形となった。冒頭発言を読み上げた二階氏が記者の質問に応じたのは「自らが決めたことだ」「首相に聞いてください」など限られた回答のみ。林氏が間髪入れず応答する場面が目立った。二階氏の85歳という高齢と不安定な発言を懸念したとみられる。
 林氏は会見冒頭から二階氏の脇に立った。衆院政治倫理審査会への出席意向の質問に、二階氏に代わり「必要ないと判断した」と否定。政治資金収支報告書に不記載だった資金の使途は公表済みだとして「いちいち政倫審に出なくても分かってもらえる」と話題を打ち切った。離党の考えを問われて「ありません」と答えたのも林氏だった。
 二階氏は不出馬と年齢の関係を問われた際だけ「制限があるか」とすぐさま反論し「おまえもその年がくるんだよ。ばかやろう」と毒づいた。
 林氏は二階氏の右腕的存在として知られる。

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