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テーマ : 沼津市

廃虚化ホテルに市町苦慮 沼津市が費用調査へ 所有者不在、解体へ代執行模索

 倒産や廃業による長年の放置で管理不全となり、景観や安全上問題のあるホテルや旅館に、観光地の多い静岡県東部の自治体が頭を悩ませている。沼津市や下田市などは、所有者が事実上不在になった建物の解体に市が関わる方向で動き出した。本来は所有者が負担すべきだった解体費を行政が肩代わりするため、費用と危険性除去の両面で難しい対応を迫られている。
閉館後、20年余り放置されたままの5階建てと9階建てのホテル。ガラス窓が割れ、一部の壁ははがれている=3月下旬、沼津市戸田
 沼津市戸田地区の中心地。戸田漁港の近くに5階建てと9階建てのホテル2棟が廃虚と化したまま、20年余り放置されている。建築から40年以上が経過し、壁のコンクリートが崩落するなど危険は増すばかり。所有法人は既に破産し、代表者は死去。事実上所有者が不在で、解体を求める相手がいなくなっている。
 この旧ホテルの問題に対し、県は2021年度に2棟をつないでいた県道上の空中通路を撤去した。市も22年度、隣接する木造の旧館を行政による代執行で解体可能な「特定空き家」に指定し、略式代執行で解体した。さらに市は2棟も特定空き家に指定。将来的な解体を見据え、24年度予算に調査設計費計2400万円を計上した。
 市の担当者は「建物密集地で危険。所有者がいない以上、解体できるのは行政以外に考えにくい」と話す。代執行で解体する場合、億単位が見込まれる費用の半額は国が補助する仕組みがあるが、「アスベスト(石綿)が使用された可能性もあり、費用の推計が難しい。まずは調査で費用を明確にし、最終的に判断したい」と慎重に事業を進める計画だ。
 (東部総局・尾藤旭)

 実態把握難しく 下田市は取得 公園化を計画
 伊豆地域7市6町(沼津、三島、伊豆、伊豆の国、熱海、伊東、下田、南伊豆、河津、東伊豆、松崎、西伊豆、函南)への取材によると、沼津市のほかに、下田市など4市町で管理上注意が必要な空き家のホテルが少なくとも5件ある。ただ「特定空き家」に指定している市町は沼津市以外になく、「県外の所有者が多く、把握が難しい」(熱海市)「『空き家』かどうかの線引きがしづらい」(伊豆の国市)など、実態把握に課題が残る。
観光地ペリーロードからも姿が見える旧下田グランドホテルの廃虚(中央奥)。20年以上、放置されている=3月下旬、下田市三丁目
 代執行によらない解体を模索する自治体もある。下田市は、市中心部の高台に立地する旧下田グランドホテルを解体し、防災機能を持たせた公園とする計画を持つ。8階建ての同ホテルは2000年に閉館後、最後に所有した不動産会社が破産。市は所有者不在になるとして、破産管財人から100万円で土地建物を取得した。「取得することで管理されない状態になるのを避けた」(市建設課)。ただ、費用は解体費だけで4億~6億円かかる見込みで、同課は「財源の確保に努めたい」とする。
 一方、東伊豆町では2023年度、長年放置されている同町大川地区のホテル跡の一部を所有者が解体した。町建設整備課は「地域の要望に所有者が応じた」とし、残る建物も自発的な解体を期待している。

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