瞬間を生き続けるために パフォーマー・松島誠さん(沼津市)【表現者たち】
日本大芸術学部在学中の1980年代前半に、後に世界的な団体となるダンスシアター「パパ・タラフマラ」に参加し、2012年に解散するまでパフォーマーとして活躍した松島誠さん(60)=沼津市=。即興を主体にした、身体と声、表情をしなやかに用いた表現で知られる。
南米、中米、欧州、東南アジアなど20カ国以上、約500回の公演実績は、言葉を介さない表現の強みを最大限に発揮するすべを心得ているからこそ成し得たものだ。
「国内外を問わず、最初はダンサー同士のセッション、体の対話から始まる。即興のやりとりからどれだけ新しいもの、高揚感が生まれるか」。アーティスト同士で一つのパフォーマンス作品を作る。それを見た、別のアーティストが協働を持ちかける。それが別の場所での作品づくりにつながる。「連鎖の積み重ね。それで人生が成り立っている」
身体表現について、パパ・タラフマラ時代に一つの気づきがあった。「ある人間を演じる時、その動きは演じる人間の感情の『説明』ではなく、自分のフィルターを通した『翻訳』でありたい。翻訳をいかにアウトプットするか。そのために自由に動くトレーニングをする」
19年、東京から故郷・沼津に拠点を移した。環境は変化したが、国内外アーティストとの共演は引きも切らない。3月下旬には、東京芸術劇場で行うポーランドの舞台芸術研究所「グロトフスキ研究所」と演出家小池博史さんの協働作品に出演する。
2月1日に還暦を迎え、「人生における、いるもの、いらないものがはっきりしてきた」という。絵画や彫刻と異なる、時間の経過と共に立ち現れ、消えていく芸術表現。その「形なき形」をつかみつつある。「瞬間、瞬間を生き続けるのがインプロビゼーション(即興)の本質。それを紡ぐために、自分にとって必要なことだけをする。無駄のない生活が重要」
(教育文化部・橋爪充)
松島さんは3月9、10の両日に静岡市葵区の「東静岡アート&スポーツ/ヒロバ」で小学生対象の身体表現のワークショップを行う。各日午前10時半、午後2時の2回。参加無料、事前申し込みが必要。問い合わせは同市コールセンター<電054(200)4894>へ(2月20日以降)。