あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 沼津市

「走る喜び 世界の障害者に」沼津出身・遠藤さん 義足アスリート支援、選手以外にも普及期待 

 沼津市出身の遠藤謙さん(45)が代表を務める競技用義足の開発ベンチャー「サイボーグ」(東京都港区)が海外アスリートへの支援を本格化させている。「オリンピアンに勝てる義足アスリートの誕生を目指す。一方で、足のない人たちが気軽に走りを楽しめる環境もつくりたい。両輪で進めていくことが大事だ」と前を見据える。トップ選手だけでなく、一般の障害者にも競技用義足を普及させることが目標だ。

サイボーク製競技用義足で練習に臨むタイ人選手を見守る遠藤さん(右端)=都内
サイボーク製競技用義足で練習に臨むタイ人選手を見守る遠藤さん(右端)=都内
新しい競技用義足での練習に取り組んだタイ人選手を見守る遠藤さん(左端)=1日午後、都内
新しい競技用義足での練習に取り組んだタイ人選手を見守る遠藤さん(左端)=1日午後、都内
サイボーク製競技用義足で練習に臨むタイ人選手を見守る遠藤さん(右端)=都内
新しい競技用義足での練習に取り組んだタイ人選手を見守る遠藤さん(左端)=1日午後、都内

 3月初旬、遠藤さんはタイのパラリンピック委員会から支援を受ける同国の陸上選手2人と都内の運動場にいた。デンプーン・コッチャランさん(24)は1週間ほど前に来日して義肢装具士との調整を重ね、同社製のブレード(板バネ)を使った競技用義足を製作した。この日の練習では、日本のコーチや選手から助言を受けて装着感を確認。「とても軽い。角度を調整して慣らしていけばもっとスピードが出そう」と満足げだった。昨年のアジア大会にも出場した実力者で、今夏のパリパラリンピック出場を目指している。
 遠藤さんによると、タイはパラスポーツに力を入れているものの、一般の障害者まで裾野は広がっていない。「まずは世界で活躍するブレードランナーを生み出す。憧れの選手がいれば、子どもたちも『走りたい』と思うはず」。国内では、パラリンピックメダリストらが、アスリート以外の障害者に競技用義足の使い方を指導する体験会を開き、参加した子どもが運動会で使用するなど普及に貢献している。遠藤さんは同様の取り組みを海外でも展開したいと考える。
 同社は当初、米国などのトップ選手向けに義足を製作していたが、近年はアジアやアフリカのパラスポーツが盛んではない国への支援に取り組んでいる。ラオスやブータンなどに出向き、コーチング技術を伝えたり、義肢装具士に現地の素材を使った競技用義足の製作法を教えたりしている。結果、それらの国では史上初のブレードランナーが誕生したという。
 遠藤さんは「走ることは誰もが持っている権利。ただ、障害者がスポーツを楽しむという文化自体がない国もある。現地の関係団体と連携し、各国の環境に合わせた支援を展開していきたい」と語った。
 (東京支社・山下奈津美)
技術で価格抑える  サイボーグ社は競技用義足を使用しやすい環境をつくるため、技術開発に力を注ぐ。競技用義足の1本あたりの価格は20万~60万円。国内の場合、日常用義足は障害者総合支援法などに基づき購入補助を受けられるが、競技用は全額自己負担で、アスリート以外が使用する際の障壁となっている。同社はコストを抑えた成形法などを研究し、1本あたり約10万円の商品を4月から試験販売する。
 また、途上国では、脚の切断部位を収納して義足と接合する「ソケット」に、安価なプラスチックを使用している場合が多い。強度が弱いためブレードの取り付けが難しかったが、独自の部品を開発して取り付け可能とし、その技術を現地の義肢装具士に提供している。遠藤さんは「『走ること』の阻害要因を技術の力で取り除く。誰もが当たり前に走れる社会を実現していきたい」と話している。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

沼津市の記事一覧

他の追っかけを読む