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【2024注目予算】三島市 バス・タクシー免許補助 地域の足、担い手支援

 残業規制強化でさらなる運転手不足が懸念される「2024年問題」は地域の足の確保にも影を落とす。バス・タクシー事業者は対応を迫られ、伊豆箱根バス(三島市)は4月から、県東部や神奈川県で運行する一部路線の廃止や減便を検討する。同社乗合課の靍田知美課長は「今までと同じ運行は難しい。存続するための対応で、理解してほしい」と吐露する。

サービス存続に向けた対策を話すツル田課長(右から2人目)ら=三島市の伊豆箱根バス
サービス存続に向けた対策を話すツル田課長(右から2人目)ら=三島市の伊豆箱根バス

 慢性的な運転手不足に、新型コロナ禍が拍車をかけた。転職や帰郷で離れた運転手は、高齢化や親の介護が重なり、戻りが鈍かった。売り手市場の中、新規採用も思い通りに進まないのが現状だ。
 人口減少や生活様式の変化で、各地のバス路線の経営環境は厳しい。運行維持のため自治体は補助金支出や自主運行に取り組むが、三島市地域協働・安全課の担当者は昨年、バス事業者から「運転手が不足し、お金をもらっても現状は維持できない」と告げられた。
 市は24年度予算案に運転手不足対策事業費補助金として400万円を新規計上。市内に本社や事業所を構えるバス3社とタクシー5社を対象に、2種免許を取得して運転手を目指す従業員の免許取得費用の3分の1を補助する。バスとタクシーの事業者に対する支援は県内初という。自主運行バスの大型化のための車両購入補助も予算化した。靍田課長は「状況を理解し、支えてもらえていると感じる。今後も役割を果たせるよう踏ん張りたい」と前を向く。
記者の目 選ばれる街へ戦略必要  公共交通の減便や廃止は、地域住民の生活の質を落とす重要な問題だ。特にその影響は、高齢者や子どもなど社会的弱者に及ぶ。
 三島市が打ち出した運転手不足対策事業費補助金は「事業者と共に公共交通を守る」というメッセージと受け取った。事業継続に必要な運転手の確保を事業者に丸投げしない姿勢は評価したい。一方、十分な運転手がいても、路線が維持できるかは不透明だ。人口減少社会において利用者が少なくなるのは必然の流れ。公共交通の在り方そのものを見つめ直す時期に来ている。
 根本的な問題の解消には、中長期的な戦略も欠かせない。市は周辺市町と本年度実施した自動運転バスの実証実験を来年度も継続する方針。自家用車がなくても自由に行き交いできる環境は住みやすさに直結する。移住・定住先として選ばれる都市になるためにも課題解決は避けて通れない。
 (三島支局・岡田拓也)

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