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「ポスト川勝」静岡県内経済界が擁立主導 知事選前倒し見通しで与野党、思惑と焦り

 「ポスト川勝」レースが風雲急を告げた8日、静岡県内与野党は慌ただしく知事選への対応を協議した。経済界が擁立を主導する中、相乗りか独自候補か、各党の思惑が交錯する。ただ、知事選の日程が大幅に前倒しされる見通しとなり、関係者には焦りもにじむ。党内の分裂を懸念する声も出始め、選挙戦の構図はまだ見えない。

議員総会に出席する自民党静岡県連の県議=8日午後、県庁
議員総会に出席する自民党静岡県連の県議=8日午後、県庁


自民県連 相乗りか一本化か「丁寧に調整」
 自民党県連は城内実会長(衆院静岡7区)と増田享大幹事長ら三役が急きょ県庁に集まり、今後の対応を協議した。城内会長は記者団に「現時点では白紙。政策、理念、熱意、人柄を踏まえて議論したい」と強調する一方、「相乗りがいい人も、一本化がいい人もいると思う。丁寧に調整し、(支援する候補を)決めるか決めないかを含めて話し合わないといけない」と候補者選びの難しさを吐露した。
 立候補の意向を表明した元総務官僚で元静岡県副知事の大村慎一氏と、出馬に意欲を示す前浜松市長の鈴木康友氏はともに、県連内で有力候補として取り沙汰されていた。党勢の低迷などを背景に独自候補擁立論はしぼみつつあり、経済界や関係団体を含めた「オール静岡」体制をどうつくるかが焦点となっている。
 この日の役員会と議員総会では、知事選の日程が大幅に早まるとして、早期に選挙態勢を構築することを確認。出馬表明が大村氏のみで、鈴木氏が正式に態度を表明していないことから、候補者選定の議論は進展しなかった。5月20日の県連大会を前倒しする方針も報告した。
 県連内では、地域や経済界との距離感などを巡って早くも「分裂は不可避」との声が上がり始めた。選挙戦でのしこりを懸念し、「自主投票も選択肢だ」との指摘もある。
 具体的な政策が明らかになるのもこれからだ。ある県議は「リニア中央新幹線へのスタンスなど、川勝路線を継承するかどうかを見極める」と注視する。

立民、国民県連など4者 候補擁立へ協議急ぐ
 知事候補擁立を急ぐ県議会第2会派ふじのくに県民クラブと立憲民主、国民民主の両党県連、連合静岡の4者は8日、立候補予定者の出馬表明や選挙日程の前倒しを受け、候補擁立作業スケジュールの見直しに追われた。
 ふじの選挙対策本部長を務める阿部卓也県議(浜松市浜名区)は、選挙日程が早まることで「国政政党の思惑が入り込みにくくなった」と評価。候補に挙がる人物の個別評価は避けつつ、「既にルーレットが回っている状態。4者協議を早く開く」と話した。
 立民県連の源馬謙太郎代表(衆院静岡8区)も「(擁立候補は)私たちだけで決めることではない」と述べ、4者協議の早期開催の必要性を強調。与野党相乗り候補を擁立する可能性については「最初から県民の選択肢をなくすのは民主主義に反する。われわれにとって最良の候補者を探すことに尽きる」と述べた。
 国民県連の田中健会長(衆院比例東海)は現時点で県連内の意見聴取が済んでいないとし、「4者が足並みをそろえていく」と述べるにとどめた。
 一方、連合静岡には、立民の渡辺周衆院議員(衆院比例東海)が訪問。「郷土のために何ができるかいつも考えている」と出馬への意欲をにじませた。連合静岡の角山雅典会長は「政党にこだわらず、労働界と経済界の思いが合致した候補者を決めたい。そこに政党が支援する形が『オール静岡』になる」と話した。政党主導で擁立すると、「県政の政局が再び起きかねない」と警戒感を示した。

中部経済界の一部が大村氏後押し 浜松の一部は鈴木氏
 県中部の経済界の一部は大村氏を後押しする。関係者によると、8日には会合が開かれ、大村氏が早速あいさつに訪れたという。出席した静岡商工会議所前会頭の酒井公夫静岡鉄道会長は取材に「(大村氏は)いろんな人と接点を持っていて、実直に県のことを考えている」と評価し、支援する意向を示した。
 酒井会長は現県政の停滞が続くことを憂慮し、次期知事について「県を一つにして良い方向に持って行く人は誰なのか、という観点で議論したい」と強調した。「静岡と浜松の対立は誰も望んでいない」とも述べ、支援を全県に広げたいとした。
 一方、浜松市の経済界の一部は鈴木氏の擁立を目指して調整している。浜松財界の重鎮の一人は「今議論している新野球場建設を進めないといけない」と主張。鈴木氏について「知事をやりたいという話は聞いている。(鈴木氏と大村氏の)一本化という話が出ている段階ではない」と明かした。
 スズキの鈴木修相談役は8日朝、自宅から車で出る際に窓を開け、「ノーコメント」とした。

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