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緊急連載【衝撃 知事辞意表明㊤】「ポスト川勝」レース 与野党駆け引き激化

 「静岡県政の停滞を考えればすぐにでも辞めさせるべきだが、候補者は立てられるのか」

自民会派への説明を終えて知事室に戻る川勝平太静岡県知事(左から2人目)=3日午後1時23分、県庁(写真部・堀池和朗)
自民会派への説明を終えて知事室に戻る川勝平太静岡県知事(左から2人目)=3日午後1時23分、県庁(写真部・堀池和朗)

 3日午後に開かれた自民党県連と県議会最大会派自民改革会議の緊急役員会。長年の政敵の辞意表明にも高揚感はなく、出席者の1人が知事選候補者の擁立状況を尋ねた。増田享大幹事長は「5月20日の県連大会で発表できれば」とデッドラインを明かした。
 川勝知事に敗北続きの自民。同じ轍(てつ)を踏まぬよう2025年の知事選に向けて昨年11月に早めのスタートを切った。内部では元官僚や国会議員、首長経験者など複数の候補者の名前が取り沙汰される。
 ただ、知事の電撃辞意表明で事態は急転した。絶大な知名度を誇る現職の不出馬により、候補者が出やすい環境が整ったためだ。あるベテランは「雨後のたけのこのように乱立することだけは避けたい」と警戒する。
 派閥の政治資金パーティー裏金事件による支持率低迷も重くのしかかる。仮に与野党対決型の選挙で敗北すれば、国政選挙に悪影響を及ぼすのは必至。幹部からも「独自候補の擁立は現実的ではない」との声が漏れる。
 さらに、立憲民主党の渡辺周氏(衆院比例東海)が後継候補に浮上したことも候補者選定を難しくする。9期の渡辺氏との対決となれば厳しい戦いが予想され、「相乗りも選択肢として考える必要がある」(ベテラン)と早速、値踏みが始まった。関係者によると、渡辺氏本人も立候補には前向きとされ、自民関係者と接触を試みた形跡もある。
 2月中旬、自民党本部が極秘裏に取った世論調査がある。知事と県議会との対立について、「知事に問題がある」「県議会に問題ある」がいずれも4割前後と拮抗(きっこう)し、衝撃が走った。県連関係者は「県民は政局を望んでいない。対立は終わりにすべき」と自戒を込めて語る。
 増田幹事長は第2会派ふじのくに県民クラブとの相乗りの可能性について記者団に問われ、「任期途中の知事の辞職は県政にとって緊急事態。できるなら『オール静岡』で新しい知事を誕生させたい」との認識を示した。
 一方、川勝県政に続いて「知事与党」を目指すふじのくに会派からも、自民との共闘路線に前向きな声が聞かれる。若手の一人は「県政で政局を繰り返さないためにも、与野党相乗りの構図が望ましい」と本音を漏らす。ただ、無所属もいれば政党の看板を背負った議員もいる寄り合い所帯。立憲民主党と国民民主党を支援する連合静岡の推薦を受けていない議員も所属する。思い描く知事像にもばらつきがある。
 「次の知事候補擁立を主体的に進める」―。会派幹部の認識は一致しているが、具体的な擁立作業はこれから。幹部の一人は「党利党略に走らず、川勝県政を継承できる人を立てたい」と話す一方、けん制も忘れなかった。「自民が乗れないのであれば、国政選挙の前哨戦のつもりで戦うだけだ」
 本格的に動き出した「ポスト川勝」レース。与野党対決か、共闘か、はたまた乱立か―。候補者擁立を巡って激しい駆け引きが繰り広げられそうだ。
     ◇
 15年近く県政のかじ取りを担ってきた川勝知事が任期途中での辞職を表明した。次期知事選の構図や残された県政課題、全国が注目するリニア中央新幹線静岡工区の行方を探る。

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