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【2024注目予算】吉田町、住吉地区の防潮堤整備 「安心」への備え加速 

 海沿いの地域にサイレンの高い音が響き渡る。吉田町内各地で3月中旬、大津波警報発令を想定した避難訓練が行われた。同町住吉地区に住む太田まさ子さん(59)は自宅近くの津波避難タワーに駆け上り、「地震が起きた時、90代の両親はこの階段を上がれるだろうか。より高い防潮堤があれば」と不安げに話した。2011年の東日本大震災以来、備えとして避難施設などを建設してきた同町は24年度、南海トラフ地震に対応した防潮堤を全域に広げる構想を前に進める。

最寄りの津波避難タワーに集まる住民ら=吉田町住吉
最寄りの津波避難タワーに集まる住民ら=吉田町住吉

 もともと同町沿岸部には、東海地震級の大地震(レベル1)に対応する防潮堤は整備されていたが、町は最大級の津波による浸水を防ぐため、震災後に整備計画を本格化させた。22年に吉田漁港以東の川尻地区に全長1・5キロ、高さ11・8メートルの防潮堤が完成したが、西側の住吉地区の沿岸2・2キロには住宅が密集している点などから工事に着手していない。
 住吉地区では震災以降、津波のリスクを懸念して内陸部に移住する世帯が増えているという。10年度末時点約1万1千人だった人口は22年度末に1万人を割り込んだ。住吉区自治会長の増田竜彦さん(72)は「津波対策は地域のにぎわいに直結する。安心して暮らせるための環境整備に期待したい」と求める。
 町は24年度当初予算案に同地区の防潮堤整備の測量設計費として4300万円を計上した。居住環境に配慮した設計や最適な堤防の構造を検討していく。

 記者の目=防災力徹底の契機に
 新年を迎え、家族だんらんのひとときを過ごし始めた矢先に発生した能登半島地震では、突如訪れる災害の恐ろしさを改めて突きつけられた。津波被害が予想される沿岸部に位置する自治体として、住民の命や財産を守るための備えは万全にするべきだ。
 県の第4次地震被害想定で吉田町は南海トラフ巨大地震の場合、最大9メートルの津波が予想され、1メートルの津波の到達時間は最短4分と試算している。沿岸部には緊急の避難場所として15基のタワーが設置されているが、高齢者の増加が見込まれる中でどれだけの住民が効果的に活用できるかは見通せない。
 町では防災を根幹にしたまちづくりをこれまで推進し、定住人口の拡大や企業誘致につながる重要な要素としてきた。ハード面の整備で終わらせることなく、町がより主体的に住民の防災意識の喚起に努めるべきと考える。
 (榛原支局・足立健太郎)

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