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【表層深層】自民一斉処分 首相、裏金のくびき脱せず「総辞職か解散」迫る野党

 岸田文雄首相が裏金事件のくびきを脱せずにいる。自民党安倍派議員らの一斉処分に踏み切り、週明けの訪米で局面転換を図る腹だが、離党勧告された塩谷立氏(衆院比例東海)らの恨み節は止まらない。野党は自身の責任を不問とした首相を突き上げ「総辞職か衆院解散だ」と迫る。後半国会に暗雲が漂う。
首相官邸に入る岸田首相=5日午前
 「強固な日米同盟を世界に示す大変有意義な機会になる」。5日昼、官邸で開かれた政府与党連絡会議。首相は裏金事件の処分より先に8日から始まる国賓待遇での訪米日程を紹介した。首相周辺は「ようやくモードが切り替わった」と安堵(あんど)の様子を見せる。
 派閥の政治資金パーティーを巡る「政治とカネ」問題が表面化した昨年11月から4カ月以上が経過した。この間政権の体力はそがれ続け、内閣支持率は20%台に沈む。
裏金事件の処分を巡る主な発言
 今回の処分を一つの区切りとしたい首相は、訪米後に衆院3補欠選挙と政治資金規正法の改正論議に注力したい考えだ。官邸筋は「支持率が上向けば6月の国会会期末に合わせた衆院解散の道が開けてくる」と踏む。
 首相は4日夜、自らの責任を記者団から問われ「政治改革の取り組みを見ていただき、最終的に国民や党員に判断していただく」と答えた。自民ベテランは「解散があり得ると緊張感を持たせる狙いだ」と読み解く。

 不穏
 とはいえ足元では処分の余波が収まらない。全責任を負わされ離党勧告に追い込まれた塩谷氏は5日午後、国会内で記者会見し「事実誤認の中で処分が下されたのは心外だ」として再審査請求の検討を表明。野党時代、執行部メンバーとして共に谷垣禎一総裁を支えた仲だった首相から一切耳打ちもなかった、と憤まんやる方ない。
 安倍派の中堅議員も「派閥のために必死にパーティー券をさばいたのにばかを見た」と憤慨。戒告処分を受けた大塚拓衆院議員は「今回の手続きには極めて強い不信感を持っている」と執行部への怒りを隠さない。
 離党勧告に従った世耕弘成前参院幹事長は早速不穏な動きを見せる。5日朝、参院安倍派議員ら約30人の会合に顔を出し「迷惑をかけた」と陳謝した。一見しおらしいが、参院本会議で首相の政治姿勢に関し「リーダーの姿を示せていない」と酷評した過去もある。
 会合では、世耕氏を慕う議員から「この固まりは維持するべきだ」と結束を促す声が上がったという。重鎮は「岸田降ろしへの仕掛けじゃないか」と見る。

 覚悟
 「日本の1部上場企業なら、最初にトップが辞任するところから始まる」。立憲民主党の安住淳国対委員長は5日、自民党総裁でありながら処分を免れた首相に批判の矛先を向けた。続く衆院内閣委員会で、その理由をただされた首相は「個人的な政治資金の修正はなかった」と答弁したものの、説得力は乏しい。
 国会では来週、裏金事件を受けた政治改革特別委員会が衆参両院に設置される方向だ。野党は法改正だけでなく、責任追及や実態解明の場と位置付け、首相の帰国を待つ。訪米を仕切り直しの好機と捉える首相に、政権浮揚の道は果たして残されているのか。
 安住氏は「内閣総辞職か解散総選挙か、後半国会のどこかの時点で決断してもらうことになる」と内閣不信任決議案の提出をにおわせつつ、首相にくぎを刺した。「帰ってきてからの国会は厳しいものになると覚悟した方がいい」

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