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首相背水 異例の大量処分 裏金けじめ 世論を意識【表層深層】

 自民党は近く派閥の政治資金パーティー裏金事件にけじめをつけるため安倍、二階両派の議員ら39人を大量処分する。内閣支持率が20%台に沈む中、「政治とカネ」問題に対する厳しい世論を意識し、一部に「離党勧告」を科す結果となりそうだ。背水の陣に立たされた岸田文雄首相による異例の決断が、今後の政権運営に吉と出るか凶と出るか誰も読めない。

自民処分を巡る審査要請ポイント
自民処分を巡る審査要請ポイント
自民が党紀委員会に処分を要請した39人
自民が党紀委員会に処分を要請した39人
自民処分を巡る審査要請ポイント
自民が党紀委員会に処分を要請した39人


 「派閥の幹部として国民から期待される役割を果たしたのか。道義的、政治的責任を厳正に判断したい」。1日夕の自民党役員会。首相は裏金事件の処分に言及した。その後、茂木敏充幹事長が安倍派幹部ら39人の処分審査を党紀委員会に要請。首相自身や二階俊博元幹事長は対象から除外された。

 線引き
 党調査で、政治資金収支報告書への不記載が判明したのは85人。明暗を分けたのは不記載額が2018年からの5年間で500万円以上あったかどうかだ。茂木氏は記者会見で、500万円以上なら年間100万円以上になると指摘。「自分は知らなかったとしても管理責任を検討する必要がある」と強調した。
 安倍派内には、パーティー券の販売ノルマ超過分が還流されていることすら知らない議員がいた。派閥の指示で報告書に記載していなかったとの証言も多い。それだけに「一律処分は不公平感が生まれる」(党幹部)として、線引きを設けざるを得なかった。

 根絶やし
 自民は05年、当時の小泉純一郎首相が推し進めた郵政民営化関連法案を巡り、党が割れた。党執行部は10月、法案に反対し、国民新党を結成した綿貫民輔前衆院議長(当時)ら10人を除名した。
 処分に先立つ9月の衆院選で、小泉氏は造反議員の選挙区に刺客候補を立て、自民を大勝に導いた。世論のお墨付きを得たと言わんばかりに強気でいられた側面があり「抵抗、反対があっても改革を進める」と豪語した。
 当時、離党勧告を受けた野田聖子氏は今年3月、BS日テレ番組で「自民はその時、その時で処分のありようがトップによって違う。根絶やしにするような再生は、あってはならない」とくぎを刺した。

 クラブ飲食
 国民の目を重視した処分もある。21年の新型コロナウイルス緊急事態宣言中、東京・銀座のクラブで飲食した松本純元国家公安委員長ら3氏への離党勧告だ。当時の菅義偉首相は「国民に無理をお願いする中、政治家は襟を正さなければならない」と陳謝した。
 離党勧告は除名の次に重い。自民幹部は「違法行為ではないのに、厳し過ぎる内容だった」と振り返る。松本氏と同じ神奈川を地元とする小泉進次郎元環境相は先月30日の会見で、安倍派幹部と松本氏のケースを比較し「不公平感を抱かないよう、厳正な処分が不可欠だ」と注文を付けた。
 裏金事件では、政治資金規正法違反の疑いで安倍派に所属していた池田佳隆衆院議員が逮捕され、除名となった。首相の意向を聞いた自民幹部の一人は「裏金事件に注がれる視線は冷ややかで厳しい。安倍派幹部は重い処分にせざるを得ない」と踏む。
 だが安倍派の反発も予想され、政権運営の火種となりかねない。同派の菅家一郎衆院議員は記者団を前に早速、気勢を上げた。「500万円の線引きは分かりづらい。非常に、非常に不満だ」

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