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浜松市予算案 投資と規律 バランス重視 地方創生に本腰

 現役世代のための積極財政か、将来負担の軽減に向けて前市政からの規律重視を継続するのか―。16年ぶりに浜松市の新たなかじ取り役となった中野祐介市長が9日に発表した2024年度当初予算案。注目された初の当初予算編成は積極財政と規律重視の両立を目指し、バランスを意識した内容となった。24年度は市最大の課題である人口減少からの脱却に向け、昨年4月の市長選から訴える「浜松から地方創生」「まち・ひと・しごとの創生」に本腰を入れる。自ら手がけた当初予算案だけに実行力と成果が改めて問われる。
 市長選の際、財政運営について思惑が異なる自民党と、市内の一部経済人から支援を受けたことから方向性が注目されていた。「市債管理と市民満足度向上への投資を両立する、“しなやかな財政運営”を実現する」。ふたを開けてみれば、中野市長が初めて臨んだ昨年の市議会5月定例会の代表質問答弁をそのまま当てはめた印象だ。
 一般会計は産業振興や子ども・子育て支援、災害対策を含めた道路や河川などのインフラ整備に重点配分した。大型投資の新清掃工場(天竜区)整備事業が終了したものの、「地方創生に必要な費用を積み上げた」(中野市長)結果として、最終的には前年度当初比1・7%増の3963億円と過去最高を更新した。
 一方で、市債残高は23年度末(見込み)から93億円減の4344億円と削減を進めた。プライマリーバランス(基礎的財政収支)も特別、企業を含めた全会計で黒字を見込む。市債の計画的償還に加え、臨時財政対策債の減少、財政調整基金の積極的活用などによって、投資拡大と財政健全化のバランスを取った。
 ただ、今後の財政運営には不安も残る。市は当初予算案に道路や河川、橋りょうなどの整備事業として前年度当初比66億円増の計283億円を盛り込んだ。中野市長は当初予算案の発表会見で、防災対策などのため25年度以降もインフラ整備として同規模の投資を想定していると明かした。大型公共施設の大規模改修なども迫り、財源の確保や財政負担の軽減は喫緊の課題だ。
 地方創生に向けた投資と、持続可能な自治体運営を今後、どのように両立させていくのか。地方自治に精通した総務省出身とあって、市民の期待は大きい。手腕が注目されている。
 (浜松総局・宮崎浩一)

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