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国産利用増 合板需要が鍵 ウッドショック後の木材市場 野田励/「ノダ」社長【聞きたい】

 約2年前に世界中が木材の供給不足に陥った「ウッドショック」と呼ばれる混乱は、海外産に依存する国内市場の弱さを浮き彫りにした。政府が木材自給率50%を目標に国産材の利用を促進する中、静岡市清水区と富士市の建材生産工場で県産材の需要を創出している。

田励社長
田励社長

 ―木材市場の展望は。
 「国産材の利用を伸ばすには、合板メーカーの需要が一つの鍵になる。2015年に稼働を始めた富士市の合板工場は年間15万立方メートルの木材を使い、毎日の使用量も一定。林業にとって経営計画が立てやすく、間伐材の利用で県内の森林管理も進む。政府は自給率を現在の約40%から50%に引き上げるため、住宅以外の木造建築物を増やす計画を立てた。当社も住宅用以外の合板を作る必要性を感じている」
 ―ウッドショックの影響は。
 「木材が集まりにくくなり、原料費も高騰した。一方で合板の価格も上がり、経営にはプラスとマイナスの両面で大きく影響した。県内の木材を仕入れる当社にとって、ウッドショックは地元林業のありがたさを再認識する機会にもなった。できる限りの努力をしてもらい、木材が全く入らなくなることはなかった」
 ―林業の状況は。
 「森林は年を取ると呼吸が減り、光合成の能力が低下する。世界各国では無計画な樹木の伐採が問題になっているが、日本はその逆。木を切らないことで森林が衰えている。木材の使い道がなければ木を切る人はいない。適切な森林管理を続けるには木材需要を高め、林業の安定化を図るのが不可欠だ」
 ―本年度、県が林業のデジタル化に乗り出す。
 「林業の現場と工場でリアルタイムに情報を共有し、木材量を調整できることは互いに利点がある。1月に完成した伊豆市の中間土場も木材の中継拠点となり、円滑な流通につながる。ウッドショックではコンテナ不足で輸入が滞るなど、海外供給の不安定さも際立った。地元木材を使うメリットは大きい。地域林業の価値を損なわないよう、持続可能な取引を通じて業界の安定に寄与したい」

 のだ・つとむ サントリーでの勤務を経て2005年に入社。専務、副社長を歴任し、18年12月から現職。伊東市生まれ。47歳。

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