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テーマ : 選挙しずおか

若い力巻き込み再生を 「あいぞめ珈琲店」店主/中野裕基さん(33) 熱海市在住【決める、未来 持続可能な街へ 私の願い④】

 3月下旬の昼下がり。相模灘に浮かぶ初島が望める熱海市伊豆山の「あいぞめ珈琲店」は、地元の高齢者や観光で訪れた若者らでにぎわっていた。その輪の中に、常連客と語らう店主の中野裕基さん(33)の姿があった。

来店客とまちづくりについて語り合う中野裕基さん=3月下旬、熱海市伊豆山のあいぞめ珈琲店
来店客とまちづくりについて語り合う中野裕基さん=3月下旬、熱海市伊豆山のあいぞめ珈琲店

 大阪府出身の中野さんは、まちづくりに携わる仕事をしようと2020年に熱海に移住。土石流はその翌年に発生した。中野さんは発災直後から見ず知らずの住民の家を一軒一軒回って困り事を聞いたり、支援物資を届けたりしてきた。時には、住民の悲痛な叫びを行政に伝えたりもした。カフェは、その活動で共に汗を流した仲間と設立したNPO法人「テンカラセン」が運営している。
 開店からまもなく1年。被災者を含め、カフェの常連客は増えた。一方で、今も200人以上の住民が市内外で避難生活を送っている。「このカフェで、離ればなれになった住民が伊豆山に戻ってくるきっかけができれば」。中野さんはそう願う。
 だが、復旧復興の道のりは長い。既に伊豆山への帰還を諦め、別の地域で新たな生活を始めた人もいる。それぞれの判断は尊重するべきだ。ただ、「伊豆山が空き家ばかりの、誰も寄りつかない地域にしてはならない」と力を込める。
 中野さんは最近、熱海に住む20~30代を対象にした異業種交流会を始めた。参加者の中には、伊豆山で新たな事業を始めたいと思っている人が複数いるという。中野さんは「高齢化が著しい伊豆山を元の住民の力だけで再生させるには限界がある。やる気がある若者を巻き込んで、新しい伊豆山をつくっていくのも一つの道だと思う」と語る。
 災害前の伊豆山を知らない“よそ者”の意見に抵抗を感じる人もいるかもしれない。それでも「自分は嫌われ者になってもいい。若者が自由に意見を言える場をつくり、その声を地域に発信していく」。伊豆山を未来につなげたいから。

 なかの・ゆうき 大阪府守口市出身。工場勤務を経て2020年に熱海市に移住。大規模土石流でボランティア活動に当たった市民有志らと21年10月に任意団体「テンカラセン」を設立。22年7月にNPO法人になった。同法人の副代表を務める。あいぞめ珈琲店は、国道135号に架かる逢初(あいぞめ)橋近くの伊豆山浜会館4階。開設資金の一部はクラウドファンディングで集めた。

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