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区再編と中山間地域振興 多様な担い手 呼び込み【検証 浜松市予算案㊤】

 昨年7月、浜松市天竜区二俣町の会議室で開かれた「天竜の未来を考える若者会議」。市内の大学4校と天竜高の学生が区内で行ったフィールドワークの成果を地元住民らに説明し、独自開発したまち歩きアプリや名物五平餅のPR方法などを発表した。

若者会議でフィールドワークの成果を発表し合う学生たち=2023年7月、浜松市天竜区二俣町
若者会議でフィールドワークの成果を発表し合う学生たち=2023年7月、浜松市天竜区二俣町

 若者会議は2020年に天竜高の生徒有志と粟飯原[あいはら]匡伸[まさのぶ]教諭(46)らが立ち上げた。天竜を学びの場として通っていた浜松学院大、常葉大などが徐々につながり、本年度は初めて5校の合同発表に発展。粟飯原教諭は「天竜を中心に、学校の壁を越えた連携が生まれている」と手応えを語る。
 05年の市町村合併以降、5年ごとに1割の急速な人口減少を続け、高齢化率が46%に上る同区は、将来の日本の課題を先取りする現場。近年、市内の大学に加えて首都圏の企業によるフィールドワークも増え、IT会社が病院のオンライン診療に技術協力する成果なども生まれた。
 旧天竜市職員で若者会議に携わる浜松学院大の坪井秀次講師(52)は「イノベーションは人が交流する場で起こる。疲弊する中山間地域に活力を生むには、多様な人の関わりが必要」と指摘し、天竜に注目が集まる近年のトレンドを好機と捉えている。
 市は24年度当初予算案で「中山間地域まちづくりトライアル事業」「中山間地域活性化事業」にそれぞれ1千万円を計上した。トライアル事業は域内外の住民や企業、団体などからアイデアを募り、地域振興につながる事業を最大200万円で委託する。既存の市民提案事業の補助制度と比べて提案者の負担が少なく、金額も大きい。地域を支える多様な主体を呼び寄せ、斬新な試みを後押しする。
 活性化事業は、行政区再編に伴って天竜区役所に配置された朝月雅則副市長や中山間地域振興担当職員が、地域の課題に迅速に対応するための「自由度の高い予算枠」(同区担当者)。朝月副市長は「住民と近い場所に身を置いて課題や意見を聞き、スピード感を持って施策に生かしていきたい」と話す。
 同区では外部の企業や団体がプロジェクトを試みたものの、長続きせず終わった事例が少なくない。地元には警戒感もある。粟飯原教諭は「地域の人と同じ方向を見て進むことが重要。市には天竜に関わる人々をうまく整理し、結びつけてほしい」と願う。新体制の区役所が、住民目線で事業展開できるかが鍵を握る。
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 中野祐介市長の就任後、初の当初予算案は中山間地域振興、脱炭素化、子育て支援といった市が直面する課題に新たなアプローチを示す内容となった。課題の現場から施策を検証する。

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