あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 政治しずおか

定住人口増へ雇用創出 新手法で企業を誘致【検証 静岡市予算案㊤】

 「希望する仕事内容や規模感の会社に勤めたいと思うと、やはり東京の企業になる」。この春から都内のIT企業に就職する静岡大4年の楠田圭佑さん(22)は打ち明ける。就職活動を始めた当初は勤務地を限定していなかったが、企業研究をする中で、最終的には「選択肢の多い東京」に的を絞って就活を進めた。
草木が生い茂った耕作放棄地。法人設立によって効率的に集約し、企業立地などに有効活用する=静岡市内
 静岡市は1990年の人口73万9300人(旧市町合計)をピークに現在も人口減少が続いている。転出者から転入者を差し引いた「社会増減」は71年から減少に転じ、外国人の転入増などで一時的に増加した2017年を除いて減少が続く。若者が進学や就職を機に県外に転居し、そのまま結婚、出産してUターンしないという流れが既定路線となって久しく、特に20~30代女性の流出が顕著だ。
 市が23年度に実施した独自調査では、23年3月に大学や専門学校を卒業した同市出身者のうち、約7割が地元に戻っていないことが分かった。市外に就職した学生に理由を訪ねると「志望する企業や職種がない」との回答が多く、大都市圏と比べて就職先の選択肢が少ないことが若者流出の課題として浮かび上がった。
24年度当初予算案の主な企業誘致・起業支援事業
 若者が魅力を感じる働く場所の確保が流出を食い止める手だてになる―。「他自治体と同じような誘致活動では生き残れない」(市企画課担当者)との危機感から、市は求心力のある企業の誘致に向け、24年度に新たな手法に乗り出す。
 市内には企業進出がかなう一定の広さの土地が少なく、地価も相対的に高い。この状況から脱するため、耕作放棄地も含めた開発可能な未利用地の集約や、企業ニーズの調査、土地所有者らとの交渉を担う新たな法人を立ち上げる。全国的に珍しい取り組みで、準備費として350万円を24年度当初予算案に計上した。
 このほか、スタートアップ企業支援にも注力し、当初予算案には23年度比10倍超の2億3千万円を盛り込んだ。起業の促進と併せ、地域企業との協業による社会実験や、中学、高校での出前講座を展開していく。
 人口減少は全国的な課題だが、全国20政令市で人口最少の静岡市はとりわけ深刻だ。定住人口増に向け、「結果」を重んじる難波喬司市長の手腕が試される。
      ◇
 難波市長が初めて編成した当初予算案では、暮らし、経済、防災の「安心感」を高める事業に重点配分した。人口減、子育て支援、公共事業に焦点を当て、予算案を検証する。

 <メモ>静岡市は第3次総合計画(2015~22年度)で掲げた定住人口70万人維持という目標を、第4次総合計画(23~30年度)では「交流人口、関係人口の拡大による活力向上」に切り替えた。しかし、23年4月に就任した難波喬司市長は24年2月16日の定例記者会見で「定住人口維持に取り組んだ上でないと社会が成り立たない」との認識を示し、「交流人口、関係人口に絞った対策は誤り」と断じた。市は再び、定住人口の維持・増加を目指し方向転換することになった。
 市は死亡者数が出生者数を上回る「自然減」についても対策を打つ方針で、出生率や50歳時未婚率が他都市と差がある原因を分析し、施策に反映させるとしている。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

政治しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む