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テーマ : 政治しずおか

【記者解説】静岡県24年度予算案、全方位へ配慮 “布石”には期待

 静岡県の2024年度当初予算案は、東京五輪・パラリンピックや新型コロナウイルス感染症流行など20年度から続いた“非日常”から脱し、5年ぶりにほぼ平常時の編成となった。急きょ生じた能登半島地震への対応など各方面に配慮しつつ、イノベーション事業と銘打った新たな枠組みを打ち出し、静岡県に横たわる課題への布石を示した。 photo01  新機軸の「イノベーション」事業は、複数年の事業実施を前提にカネも人も充てる新たな仕組み。財政担当者らが新規性を打ち出す知恵を絞った。厳しい財政状況を受けて、編成段階で20件から8件になり各事業の予算額は小粒感が否めないが、多分野にわたる挑戦的な取り組みは将来の静岡県の魅力につながる期待感がある。県は並行して茶や海洋、医療、温泉など幾つもの既存プロジェクトを抱えていて、中には停滞感がうかがえる事業もある。改廃を含めて予算のメリハリをつける必要がある。
 一般会計の規模は、予防的に新型コロナ対策費を措置した23年度と比べ、都道府県の多くが減額傾向にある。静岡県は実質ベースでは増額となり、コロナ禍後を襲う円安や物価高などの社会情勢への対応、防災・減災、少子化対策など全方位への気配りがにじんだ。
 歳出の投資的経費は前年度比4・5%増と2年ぶりに増加した。企業立地助成は23年度比1・7倍を見込むが、ようやく本格化する沼津駅周辺鉄道高架事業のほかは、既存施設の機能更新が多く、積極投資には見えない。静岡県の転出超過数は総務省調査で23年は全国ワースト7位に悪化し、人口減少は危機的状況だ。若者の流出抑止や産業構造の転換などへ大胆な施策をさらに強く打ち出すべきだ。
 23年度予算で前面に出した東アジア文化都市事業は、24年度は主要事業の予算書から文言が消えた。川勝平太知事の発言を巡る県議会自民会派の反発などを受けたとみられ、一過性に終わりかねない状況となった。予算が最大限の効果を発揮し、成果を導き出すには、知事と県議会が静岡県の課題への危機意識を共有できるかに懸かっている。
(政治部・青島英治)

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