政倫審公開 自民及び腰 野党憤慨「説明責任に背」【表層深層】
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会を全面公開するかどうかで与野党が駆け引きを展開した。安倍、二階両派の幹部5人の意向を盾に全面公開に及び腰の自民には、目立たぬように幕引きを急ぎたい思惑がちらつく。立憲民主党など野党は「説明責任に背を向けている」と憤慨する。
「説明責任は国民のために果たすものだ。政倫審は当然、完全公開すべきだ」。26日午前、衆院第1委員室。予算委員会の集中審議で、立民の野田佳彦元首相は岸田文雄首相に迫った。首相は「国民に向けて説明する大変重要な場だ」と語るものの、「国会の判断だ」として踏み込まない。
▼真相解明と逆行
正午の政倫審幹事会では、与党筆頭幹事の丹羽秀樹氏(自民)が「傍聴、撮影録音、会議録の閲覧は完全な非公開としたい」と提案した。22日に野党が求めた全面公開に対し「ゼロ回答」の内容。審議時間も、野党は1人当たり90分を要求したが「45分」だった。
野党筆頭幹事の寺田学氏(立民)は、政倫審に関し原則非公開だと承知しているとしながら「誰に説明責任を果たしたいのか。大きな溝がある」と記者団に不満を漏らした。共産党の穀田恵二国対委員長も「真相解明と逆行する」と非難した。
▼身内も苦言
自民が歩み寄りを見せたのは午後になってからで、国会議員の傍聴に限り認めるというものだ。完全非公開から「一歩進んだ」(自民中堅)と言えるかどうか-。立民幹部は「巨大与党の答えとしてはせこい」と憤まんやる方ない。案の定、丹羽氏の譲歩は、けんもほろろに寺田氏から一蹴された。
自民が提起した議員のみの傍聴は、過去の政倫審で3例ある。1998年6月の山崎拓自民政調会長、2001年2月の額賀福志郎前経済財政担当相、04年11月の橋本龍太郎元首相(肩書はいずれも当時)だ。3回とも審査後、野党は「疑惑が深まった」と断罪した。
今回、政倫審の出席者だけでなく、運営方法を巡っても一発回答を渋る自民の対応に、身内からもいぶかる声が上がる。石破茂元幹事長は記者団の前で「なるべく公開した方が大勢の人に説明できる。非公開にする合理的な理由は見当たらない」と苦言を呈した。
▼首相の美辞麗句
首相を筆頭に、自民が裏金事件を巡り「説明責任」を重ねて訴えながら、相反するような消極姿勢が目立つのは一体なぜか。自民国対関係者は「政倫審開催を申し出た5人が公開するかどうかで意見が割れているからだ」と釈明する。
5人のうちの一人は「完全非公開というから出席を決めた。公開する予定なんてない」と不快感を示す。別の一人は「そもそも公開、非公開の希望は言っていない」と漏らす。足並みがそろわないうちは「小出し、小出しでかわす」(ベテラン)というわけだ。
とはいえ与野党で大筋合意した政倫審開催は28、29両日。落としどころを見いだすまでに残された時間はわずかだが、与野党は「ボールは野党に投げた」「ふざけるな。ボールは自民が持っている」と神経戦を続ける。
当の首相は26日夕の自民役員会でも態度をはっきりさせず「議員が自ら置かれた状況を省みて、政治家として丁寧な説明を尽くすよう促したい」と繰り返した。美辞麗句の感は拭えない。