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沼津・戸田漁港“海からの誘客”増 プレジャーボート受け入れ奏功、関係者ら次の一手探る

 沼津市の最南端、駿河湾に面する港町の戸田地区で新たな地域おこしが進んでいる。2020年に始めた、漁港にプレジャーボートなどの停泊を認める“海からの誘客”が効果を上げている。海に関連する資源を生かして交流を促し、水産物の消費拡大につなげる水産庁の「海業(うみぎょう)」振興モデル地区にも2023年に選ばれた。関係者は取り組みの加速に向けて次の一手を探る。

プレジャーボートやヨットを受け入れる浮桟橋。海からの誘客は効果を上げている=沼津市の戸田漁港
プレジャーボートやヨットを受け入れる浮桟橋。海からの誘客は効果を上げている=沼津市の戸田漁港

 地区の核となる戸田漁港。かつて同港と沼津港を結んだ定期船が泊まった浮桟橋は、夏を中心にプレジャーボートやヨットが利用する。港には原則として漁船しか着岸できなかったが、同桟橋に限り地区での飲食や宿泊を条件に受け入れを始めた。首都圏などから訪れる乗員が増え、戸田観光協会の佐藤寿美事務局長(58)は「週末を中心に宿泊施設の空き部屋が減った。リピーターが圧倒的に多い」と手応えを語る。
 戸田地区は沼津市中心部から約30キロ。海以外の三方向は山に囲まれる風光明媚(めいび)な土地。タカアシガニをはじめとした深海の海産物でも知られるが、2014年に「生命線」だった定期船の廃止が打撃となり、飲食店や宿泊施設の廃業も相次いだ。
 危機感を強めた観光協会などは、年間を通じて穏やかな周辺水域の特性と、役割を終えていた浮桟橋に着目した。20年からは清水港―戸田港間のヨットレースも開催。温泉やサイクリングなど来訪者の消費活動の場は広がっている。
 今後は人的、物的資源を生かした体験型サービスの提供を検討している。魚さばき体験や漁業関連施設の見学といったアイデアが出る一方で、船の受け入れ拡大に向けた桟橋増設が検討課題になっている。
 同協会の川合健次会長(75)は「地域一体となって魅力を発信し、にぎわいを生みたい」と力を込める。県から委託され漁港を管理する戸田漁協の塩崎敏巳組合長(76)は「漁業に影響が出ない形で地域の活性化につながるなら協力したい」と前向きな姿勢を示す。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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