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時論(3月7日)難局でも日ロ交流続けたい

 幕末からロシアとの交流の歴史を持つ下田市は今月、ロシアのウクライナ侵攻以降、見送ってきた友好関連行事を復活させる。ロシア使節プチャーチン提督率いる軍艦「ディアナ号」が安政大地震の津波で大破した際に犠牲になったロシア人が眠る玉泉寺で慰霊祭を営む。ロシア側の出席はないが、日ロ交流再開の契機になることを期待したい。
 北海道出身の筆者は約40年前の小学生の頃、授業で担任の教師から、北方領土4島の名前を暗記するように言われた。位置や特性などの詳細も覚えた。教師は「関心を持ち続けることで返還への機運が高まる」と暗記の意味を説明し、「みんなが大きくなった頃には必ず戻っている」と強調した。
 20年前、北方領土の取材で4島に最も近い根室市を訪れた。長らく島に住むロシア人との交流に参加している元島民の80代男性は、政治レベルで緊張が高まって交渉が困難になろうとも民間交流は継続すべきだと訴えた。「全てを止めては終わってしまう。歴史が風化し、世論の関心をなくしてしまうことが一番怖い」。男性は「指一本でもかけておくべきだ」と国後島の雪山を指さし、関係を絶やしてはならないと繰り返した。
 静岡県東部にはロシアゆかりの地が複数ある。ディアナ号は修理のため戸田(現沼津市)に向かう途中、富士沖まで流されて難破。その後、両国共同で洋式帆船「ヘダ号」を建造した歴史から、富士、沼津両市も交流を続けてきた。沼津市は新年度、ヘダ号に関する資料を展示する博物館の移転計画策定に乗り出す。多くの人が関心を持つ施設に発展させる必要がある。領土問題は本県にとっても身近な話なのだから。
(東部総局編集部長・高橋和之)

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