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沼津・門池 地域活性化に励む福田さん 結束促すシンボル 今でも【竜と生きる 辰年2024④】

 公園の遊具や小学校のマスコットキャラクターにもなっている竜は沼津市門池地区の「顔」だ。同地区連合自治会長の福田和男さん(70)は、門池の竜伝説をまちおこしや地域ビジネスに取り入れている中心人物。「伝説をただ守るのではなく、活用することで町の活性化につながる」

竜の形をした雲を見つめる門池地区連合自治会長の福田和男さん=2023年12月、沼津市岡一色の門池公園
竜の形をした雲を見つめる門池地区連合自治会長の福田和男さん=2023年12月、沼津市岡一色の門池公園
沼津市 門池
沼津市 門池
竜の形をした雲を見つめる門池地区連合自治会長の福田和男さん=2023年12月、沼津市岡一色の門池公園
沼津市 門池

 地域コミュニティーの希薄化は各地で年々進行している。しかし自然災害や高齢者の介護、子育て支援など、防災と福祉の観点では地域に住む一人一人が密に連携し、協力することが欠かせない。門池地区では東日本大震災以降、海沿いを避ける人々の移住によって人口が増え続けている。移住してきた人たちの地域愛を育み、古くから暮らす住民との絆を醸成することが急務の課題だった。2017年、連合自治会長になった福田さんは、課題解決のため門池の竜伝説に目を付けた。「まちづくりは人づくり。仲間意識を生むような地域のシンボルが必要だった」と振り返る。まずは伝説を転入者にも知ってもらわなければと、動画や絵本の制作に乗り出した。
 門池の竜は雨を降らせる不思議な玉を帝釈天からもらった-。戦前まで、先人は日照りが続くと、天上に帰った竜に向けて雨乞いをしたという。「地域の一大事のとき、すがるべき唯一の対象として竜を据え、彼らは団結してきた」。時代はだいぶ変わったが、現代でも竜伝説を中心に住民が結束するよう福田さんは奮闘する。23年には自治会員でつくる門池コミュニティ推進委員会の事業として地元産のサツマイモを使った芋焼酎の製造販売を企画。池に落とした玉が千年後に光ったという伝説から、商品名は「千年の念(おもい)」とした。「『門池ならでは』が商品価値につながる。地元には愛着づくり、対外的には認知向上を図れれば」と願う。
 22年秋に開局した沼津岡宮郵便局では2匹の竜がデザインされた風景印(地域にゆかりのある風景や名所を描いた消印)が導入された。夫婦の竜にちなんで結婚式の招待状に押したいという人も。昨年末には風景印を求め多くの人が県内外からやってきた。伝説を活用し、商品や場所に価値を加え、人々が門池に立ち寄る理由を作りたいと意気込む。「24年は辰年。忙しくなりそうだ」。観光客の増加にも期待を寄せる。
 連合自治会長も現在、4期目。門池の竜伝説を大切に思う気持ちは、人一倍強い。「いつも夫婦の竜が天から見守ってくれていると思っている。そう信じないと面白くないでしょう」と笑う。池のほとりを歩きながら空を見上げると長く伸びた二筋の雲と小さな玉状の雲が寄り添って見えた。「ほら夫婦の竜がお宝をもって遊びにきてくれた」

 門池の竜 沼津市門池地区連合自治会の20周年記念誌などによると、帝釈天から結婚祝いに虹色の玉をもらった夫婦の竜が雲の上から門池に玉を落としてしまう。雌竜は下界に降り、ボロボロになりながら池を探し回るが、999年たっても見つからない。玉を落としてから1000年がたったある日、池の中で玉がまぶしく光った。玉には雲を生み、雨を降らせる不思議な力があった。雌竜は玉の力で生まれた雲に乗り、雨が降る中、無事に天上界に戻って雄竜と一緒に幸せに暮らしたという。

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