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内水氾濫対策を本格化 激甚化する水害【検証 沼津市予算案㊦】

 2023年6月2日の夕方、沼津市大岡に住む男性は断続的に強い雨が降る中、市から依頼を受け、自宅近くの白滝排水機場にあるポンプを起動した。安全な場所から起動を見守っていたが、狩野川に注ぐ近くの水路の水位はみるみる上昇。「身の危険を感じた」と当時の状況を振り返る。その後も想定を超える雨が降り、排水機場に水が流入。ポンプの電源が浸水して停止し、周辺の住宅街へ浸水被害をもたらした。

2023年6月の大雨で電源が停止した白滝排水機場=沼津市大岡
2023年6月の大雨で電源が停止した白滝排水機場=沼津市大岡

 沼津市は近年、市西部を中心に度重なる浸水被害に見舞われている。昨年6月の大雨では、市東部の狩野川沿いの地域でも被害が発生した。背景には河川の本流が増水し、支流に集まった雨水が本流に排出しきれずにあふれる「内水氾濫」の頻発化がある。
 市は激甚化する水害に対応するため、2024年度から本格的に対策に乗り出す。昨年の大雨で被害の大きかった市西部の西添町では、排水ポンプ場を新設する。市内の排水機場3カ所でポンプが停止して浸水範囲が拡大したのを教訓に、市内各地で使える排水ポンプ車1台と可搬式排水ポンプ設備2台を導入する。一般会計当初予算案に3台の費用9千万円を計上した。
 ソフト面も充実させる。市は内水氾濫を想定し、浸水想定区域と避難方法などを示す内水ハザードマップの作成に着手する。静岡市は12年にマップの策定を始めるなど、県内の他市町では既に導入が進んでいる。
 沼津市は当初、市西部の沼川と高橋川流域のみを対象に作成する計画だったが、昨年の大雨被害を受けて市全域に拡大した。大岡地区に長年住む男性(81)は「子どもの頃は年3回は起きた洪水も、最近はほぼなかった。今回の規模の浸水は狩野川の堤防や排水機場ができてから初めて」と近年の変化を語る。市はハザードマップを通じて内水氾濫のリスクを周知し、市民に意識の変革を促す。
 (東部総局・尾藤旭、菊地真生)

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