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【時評】スポーツ指導者 役割の変化 多様なニーズ 対応能力を(杉本龍勇/法政大教授)

 この1月から静岡県スポーツ協会主催の育成年代指導者を対象とした5回にわたる研修がスタートした。私はこの研修のコーディネーターとして関わり、今年で4年目を迎えている。毎年40人前後の参加者が集まり、静岡県内で活躍する指導者が中心ではあるが、他地域からの参加者も増えてきている。コーディネーターとして注意を払っている点は、普遍的な基本コンセプトを維持しつつ、同時に社会変化に伴う対応を促す内容を提供する、つまり、指導者の能力を時代に合わせてポジティブに発展させることである。

杉本龍勇氏
杉本龍勇氏

 日本の現状を鑑みると、指導者の役割は大きく変化している。指導内容はもちろんであるが、実施者のニーズや価値観の変化、社会状況の変化によって、コミュニケーション方法や果たすべき責任も以前とは大きく異なる。コミュニケーションの面では、ハラスメントの防止は当然のこと、実施者の個性を把握して対応すること、そして封建的でない人間関係ならびに信頼を構築することが必須である。したがって、上から一方的な命令を下し、従順さを求める関係ではない。
 また、実施者ニーズの多様性を受け入れ、競技力向上だけでなく、コミュニティーへの帰属、あるいはレクリエーションなど、多様な目的に対応できる指導方法が要求されている。したがって、指導者自身の経験に強く依存した対応は実施者とのミスマッチを招く可能性が高く、場合によっては、それがスポーツ嫌いを生み出す。
 現在進行している部活動の地域移行においても、これまで教員が果たしていた役割を受け継ぐ必要もあり、実技だけ教えていれば良いというわけではなくなる。地域住民に対する福利厚生サービスとしてスポーツが活用されることも求められ、その地域での生活に潤いを与え、定住する魅力の創造を担うことも考えられる。つまり、指導者に求められる役割は今までよりも多岐にわたる。
 もちろん1人の指導者が全ての役割を背負うわけではないが、従来とは比較にならないほど多様な能力が必要となる。そういった点を踏まえると、多様なスキルを獲得することが指導者の重要な課題であり、そしてそれらの能力を確実に発揮することが今後のスポーツを支える重要な土台になる。
 (法政大教授)

 すぎもと・たつお 浜松北高―法政大―ベルリン工科大―中京大大学院卒。1970年、沼津市出身。バルセロナ五輪陸上男子短距離日本代表。法政大経済学部教授、静岡県スポーツ協会理事。元清水エスパルスフィジカルコーチ。浜松市やらまいか大使。専門はスポーツ経済学。

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