あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 島田市

女性だけでなく、男性も生きづらさを感じています 「男だから」にストレス 静岡新聞社アンケート【NEXT特捜隊】

 近年、ジェンダー(社会的性差)平等への意識が高まったことで、「男性の生きづらさ」にも目が向けられている。静岡新聞社のNEXT特捜隊に「女性だけでなく、男性の生きづらさについても取り上げてほしい」との投稿があり、ウェブアンケートを実施した。長時間労働と家事・育児の両立に悩む声や、学校に男子更衣室がないことへの不満などが寄せられた。(生活報道部・大滝麻衣)
【▶静岡新聞社NEXT特捜隊 LINE友達になる】 
 2~5日に行ったアンケートには、静岡県内を中心に13~80歳の計66人が回答した。職場や家庭、学校で「男性だから」という固定観念を理由とした生きづらさや悩み、ストレスが「よくある」「時々ある」と答えたのは25人だった。 photo01

>>更衣室 なぜない?
 10代から複数上がったのは、学校の施設や対応への不満の声。浜松市浜名区の17歳は「プールの時、男子はプールサイドで着替えている」と現状をつづった。長泉町の13歳も「男子は更衣室がなく、それが当たり前みたいになっている」と疑問視した。 photo01
 社会に根強く残る性別役割分業意識を指摘する声も多かった。島田市の公務員(33)は「男性だから、仕事をして家族を養わなければならないという雰囲気を感じる」。一方、家事や育児への男性の参画が進む中、静岡市駿河区の公務員(42)は「職場では昔ながらの長時間労働が残り、家事・育児の分担が当たり前になったため、そろそろ体が限界」と吐露した。子育てに関しては「しようと思っても環境がなかったり、物理的に難しかったりすることがある」(38歳会社員、静岡市清水区)、「女性の上司に『奥さん一人で育てられないの』と言われる」(40代会社員、県外)などの声もあった。 photo01
>>誰でも力持ち?
 伊東市のパート・アルバイト(50)は「男性だから力持ちと思われ、重い物の移動を頼まれるが、自分は腰痛持ち」と体力面への固定観念について記した。「『男として』というくくりで、自分自身で全て決断しなくてはいけない」(73歳無職、三島市)、「悩みは、弱音としか受け止められない」(64歳会社員、藤枝市)など、悩みや迷いを一人で抱え込む人もいた。
 一方、生きづらさや悩みが「あまりない」「ない」としたのは37人。その理由として「男として強がって生きているので前を向ける」(58歳経営者・役員、静岡市葵区)、「職場で上司が性別に関係なく業務を配分しているから」(21歳会社員、富士宮市)などがあった。

>>気にしたら負け?
 ジェンダーに関する考えを尋ねた自由記述欄には「選挙で候補者のポスターに『#ママだから』と書いてあり、違和感があった。今は男性も子育てをする時代」(41歳会社員、磐田市)、「国がジェンダー平等に本腰を入れていないので、地域社会や職場でなかなか進まない現状がある」(64歳無職、掛川市)などの指摘があった。一方、「ジェンダーについて騒ぎ過ぎている」(79歳無職、静岡市駿河区)や「気にしたら負け。少子化の助長になる」(44歳会社員、焼津市)など、ジェンダー平等を目指す社会に否定的な声も寄せられた。
 アンケートで、悩みなどを相談できる人がいるか、もしくは場所があるか尋ねたところ、「いない(ない)」と回答した人が37人で、「いる(ある)」とした29人を上回った。相談する人(場所)は、「友人」(11人)、「妻・彼女」(8人)の順に多かった。そのほか、「心療内科」「カウンセラー」「会社内の機関」などがあった。

悩み抱え込む傾向に 男性相談の相談員心理カウンセラー 松林三樹夫さんに聞く

 静岡県内で2005年から男性相談の相談員を務める心理カウンセラー松林三樹夫さん(72)に「男性の生きづらさ」について聞いた。 photo01

 ―なぜ、男性の生きづらさが注目されるようになったのか。
 「一見、男性優位と言われる社会で、実は男性も、パワーハラスメントなどが横行する不平等な中で必死に生きている現実がある。そのストレスが反動として女性に向けられ、ジェンダー不平等につながってきた。女性がジェンダー不平等に異議を唱えたことで、男性自身も今の社会の中での不平等性や生きづらさに気付いていったのではないか」
 ―男性の生きづらさはどういった点にあるか。
 「『男は強くなければ』という思いがどこかにあるためか、人に弱い部分を見せられず、悩みを一人で抱え込んでしまうことが、生きづらさの一因にある。アンケートでは『相談できる人がいない』と回答した人が半数以上とのことだが、そもそも人に相談する発想がないのでは。また、『男性は外で働いて稼げば十分役割を果たしている』といった性別役割分業意識にとらわれている男性がまだまだ多い。時代は変わってきており、それだけで女性が納得するはずはなく、意識に差があると夫婦・家族間の確執が増え、男性自身も苦しむことになる。男女が共に働き、家事育児を分担していくというように頭を切り替える必要があるが、長時間労働などでそれがかなわない人もまだ多い」
 ―行政が設ける男性相談窓口の意義や課題は。
 「女性対象の相談窓口に比べ、男性対象の窓口は少ないのが現状。どこの市町にも設けてほしい。悩みがあれば、自分でも考えるが、人にも相談していいんだという意識が広がれば。心に抱えることを話すだけでも、楽になるし、家族などに向かってしまうストレスや暴力を減らせる可能性もある」

静岡県と3市に相談窓口 「気軽に利用を」
 県内では県と静岡、浜松、藤枝の3市が男性専用の電話相談窓口を設け、夫婦関係や生き方、心身の健康など幅広い相談が寄せられている。いずれの窓口も男性相談員が対応。担当者は「悩みを一人で抱え込まずに、気軽に活用してほしい」と呼びかける。
 2022年度の相談件数は県が133件、静岡市が84件、浜松市が195件、同年6月に窓口を設けた藤枝市が14件。過去15年ほどの推移を見ると、いずれも増加傾向で、相談の需要は高まっているとみられる。静岡市と県は昨秋、10年ぶりに男性電話相談員の養成講座を開いた。
 県男女共同参画課によると、女性を対象にした相談との違いは性に関する悩みが多い点。22年度は県全体の2割を占めた。体の悩みや性的欲求、性的加害・被害に関する相談があったという。浜松市の担当者は「主たる内容が明確ではなく、他では話せない自分の体や性の悩みの相談が多い」とし、背景に「社会的孤立や寂しさがあるのでは」と指摘する。
 NEXT特捜隊のアンケートで、県内自治体の男性相談窓口の存在を知っているか尋ねたところ、「知らない」が58人で、「知っている」の8人を大きく上回った。

静岡県内の男性電話相談
・静岡県<電054(272)7880>=第1、第3土曜午後1~5時
・静岡市<電054(274)0105>=第2、第4火曜午後7~9時
・浜松市<電053(412)0352>=毎週木曜(第3は面接も)、第2、第4日曜午後6~8時
・藤枝市<電054(643)3198>=毎週水曜午後3時~6時45分

→NEXT特捜隊 公式サイトはこちら

▶身近な疑問、 モヤモヤ、困りごと...静岡新聞社NEXT特捜隊へお寄せください。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

島田市の記事一覧

他の追っかけを読む