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テーマ : 島田市

災害時の行政広報「紙媒体不可欠」 石川・穴水町派遣の島田市職員が初動調査 停電、スマホ基地局使えず

 全国広報コンクールで内閣総理大臣賞などの受賞歴がある島田市の「広報しまだ」を手がける同市広報プロモーション課参事の鈴木克典さん(52)が2月末から3月初旬、能登半島地震の職員応援派遣で石川県穴水町に滞在し、災害広報の初動対応について同町広報担当職員に聞き取り調査を行った。被災地では停電したり、電波が不安定になったりしてスマートフォンが使えない状況があったといい、「災害広報は紙媒体が不可欠」と教訓を指摘。災害対策としても自治体の広報スキル向上の必要性を呼びかけている。

穴水町が発行した「災害広報」と「災害臨時特別号」
穴水町が発行した「災害広報」と「災害臨時特別号」
後輩職員に穴水町で得た教訓を伝える鈴木克典さん(左)=3月中旬、島田市役所
後輩職員に穴水町で得た教訓を伝える鈴木克典さん(左)=3月中旬、島田市役所
穴水町が発行した「災害広報」と「災害臨時特別号」
後輩職員に穴水町で得た教訓を伝える鈴木克典さん(左)=3月中旬、島田市役所

 聞き取りは静岡県の対口支援先の穴水町に島田市が2月27日~3月2日に派遣したトイレトラック業務の合間に行い、後日電話やメールで補足取材した。町職員によると、発災時は停電や基地局が使えなくなり、情報発信は紙媒体に頼らざるを得ない状況だったという。高齢化が進む同町はスマホを持たない住民も多かった。鈴木さんは「デジタルだけに頼ってしまうと、情報が住民に届かなくなってしまう」と受け止める。
 同町は発災直後から、広報紙の号外として簡易的な「災害広報」をコピー機で刷って職員が避難所に配って回り、自宅避難をしている住民にも町内会長らを通じて届けた。応急仮設住宅の申し込み開始や罹災(りさい)証明書の申請案内など最新の情報をまとめ、迅速な発行を繰り返していたという。
 鈴木さんは「時間も紙面も限られる中、情報に優先順位をつけて分かりやすく伝える技術は訓練が必要」と訴える。紙媒体の利点については「信用できる職員が広報紙を運び、避難所に置かれることで信頼できる情報になる」と強調した。
 島田市で広報を担当して18年の鈴木さん。「広報しまだ」が2020年に内閣総理大臣賞を受賞した時は障害や病気のある兄弟姉妹を持つ子ども(きょうだい児)をテーマに悩みや家族に対する本音に迫った。「広報担当者が大事にすべきことは想像力。課題を自分事として考えることから住民との距離が少しずつ縮まっていくと思う」と日頃からの心構えを明かした。
 発災から1カ月後、穴水町が2月1日に発行した通常版の広報紙は輪島市や珠洲市、能登町にも写真提供を依頼し、奥能登全体の被災状況を掲載した。鈴木さんは「穴水町の広報担当は誠実に使命感を持って住民と向き合っていた。災害時にも住民から信用されて、信頼できる情報を届けるために、自治体が平時から広報紙を発行しているとの意識を広めたい」と語った。
 (社会部・吉田史弥)

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