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⚽偏る編成 若手は埋もれ 育成型クラブ 看板倒れ【失意の名門 清水J1復帰ならず㊥】

 7季ぶりのJ2降格という昨秋の屈辱を経て迎えた今季。近年の低迷からのV字回復を図るべく、清水が打ち出した指針は「育成型クラブの再建」だった。指針の下には2027年のJ1優勝というチームの将来設計に加え、五輪やワールドカップ(W杯)の代表選出という選手育成の目標も盛り込んだ。

J1昇格プレーオフ決勝に臨む清水の選手たち。「育成型クラブ」を掲げた今季だったが、顔触れに昨季からの変化はほとんどなかった=2日、国立競技場(写真部・二神亨)
J1昇格プレーオフ決勝に臨む清水の選手たち。「育成型クラブ」を掲げた今季だったが、顔触れに昨季からの変化はほとんどなかった=2日、国立競技場(写真部・二神亨)

 クラブは20年に社長、チーム編成トップのゼネラルマネジャー(GM)を一新。「強いチームをつくる」と右肩上がりの強化費で即戦力級を次々と獲得し、補強中心の編成を進めた。方針転換とも言える「育成型」の表明は、結果が伴わなかった近年の方向性を省みた上での、不退転の決意かに思えた。
 しかし、ふたを開けてみればピッチに立つ顔触れに、昨季からの変化はほとんどなかった。昨季最終戦の先発8人が今季のリーグ最終節のスタメンに名を連ね、新たに加わったのは35歳のMF乾、今季加入の30歳のDF高橋、昨季も主力だったMF原。ベテランや中堅の実績ある選手でほぼ占められた。
 それもそのはず。チーム編成は近年の補強で加わった実力者や登録枠を上回る外国籍選手であふれた、偏りのある状態のまま。序盤戦の出遅れによってひりつく昇格争いが続く中、経験の浅い若手は埋もれていった。
 今季、ユースからの昇格や大学から加わった6人の中で、清水でリーグ戦に出たのは2人のみ。合わせて2試合、46分間の出場にとどまった。過去3年間に加入した計12人の新人では、今季は5人が出場機会を求めて期限付き移籍を選んだ。
 掲げた指針とかけ離れたチームは、J2屈指のタレント集団と称され、「個の力」でねじ伏せながら勝ち点を重ねた。ただ、終盤戦にはチーム人件費で実に20億円近くも差がある藤枝や熊本に完敗。監督交代の繰り返しで積み上げの乏しい集団は、組織力や戦術完成度の高い相手を前に、あまりにもろかった。
 今季最終節のメンバー18人の平均年齢は29・50歳とJ2で最も高く、長期的視点に立てばすでに若返りは待ったなしの状態にある。今季は萌芽(ほうが)すら感じられなかった「育成型クラブ」の行く末は、見通せない。
 <続きを読む>⚽変わりゆくクラブの色 問われる現体制の展望【失意の名門 清水J1復帰ならず㊦】

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