テーマ : 清水エスパルス

変わりゆくクラブの色 問われる現体制の展望【失意の名門 清水J1復帰ならず㊦】

 今季、国立競技場でホームゲームを開催した清水は、試合に向けて一つの企画を行った。クラブ誕生の背景となった清水市(現静岡市清水区)の少年選抜チーム「清水FC」の発足から55年を記念し、顕彰する内容。清水FCの存在を元に、唯一の市民クラブとして初年度からJリーグに参加したエスパルスの原点を“聖地”で発信した。

磐田戦でスタンドを埋める清水のサポーター。多くの支えにどう応えるのか、クラブの展望が問われている=10月、アイスタ日本平(写真部・小糸恵介)
磐田戦でスタンドを埋める清水のサポーター。多くの支えにどう応えるのか、クラブの展望が問われている=10月、アイスタ日本平(写真部・小糸恵介)
練習の指揮を執る秋葉監督(中央)。来季の続投が決まった=11月、三保グラウンド
練習の指揮を執る秋葉監督(中央)。来季の続投が決まった=11月、三保グラウンド
磐田戦でスタンドを埋める清水のサポーター。多くの支えにどう応えるのか、クラブの展望が問われている=10月、アイスタ日本平(写真部・小糸恵介)
練習の指揮を執る秋葉監督(中央)。来季の続投が決まった=11月、三保グラウンド

 地域の熱が選手を育て、やがてプロチームを生み出した特別な歩みを持つ歴史を振り返る試みはしかし、現在の姿と対照的であることを鮮明にした。
 山室晋也社長、大熊清取締役ゼネラルマネジャー(GM)が就任した2020年以降、チーム強化への惜しみない投資が加速した。22年度決算では強化費が29億8千万円に達した。一方で下部組織出身や生え抜きの選手を軸に据えたチームづくりからは遠ざかった。
 強化費が膨れ上がったことで、売上高も50億円を突破。Jクラブで9番目の規模となった。ただ、内実に目を向けるとクラブ単体の収支では支出が大きくかさみ、約30億円(22年度)の広告収入の多くを親会社の鈴与グループが賄い、穴埋めしているのが現実だ。
 実質的な“赤字”を減らすために生じるしわ寄せは、多方面に及ぶ。山室社長の下で21年にデジタル移行した公式情報誌「エスパルスニュース」は27年間の歴史を閉じることが決定。子どもたちへの普及の部門にも利益が求められ、現場からは「高いお金を払わないとエスパルスではサッカーができない」との声が漏れる。
 6日、秋葉忠宏監督の来季続投を発表した清水。わずか勝ち点1でJ1自動昇格を逃した今季の雪辱へ、「ベースは変えるつもりはない。選手の個性を生かすことが大事」と継続を強調した。だが再びJ2を戦うことが決まったことで、主力を担った選手たちを中心に来季の去就は見通せない。現体制がどんなクラブを目指し、何を守るのか。31年の歴史で最低の成績を刻んだ今、改めて問い直されている。
 (市川淳一朗が担当しました)

いい茶0

清水エスパルスの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞