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テーマ : 掛川市

新時代の調律師像築く ヤマハピアノテクニカルアカデミー(掛川)中田さん退社

 ヤマハのピアノ調律師養成機関「ヤマハピアノテクニカルアカデミー」(掛川市)で所長を務めた中田吉彦さん(65)が27日、退社する。アコースティックピアノの需要とともに、アカデミーの生徒は減少の一途をたどったが、「ピアノは売ったら終わりの楽器ではない。優秀な技術者の育成はピアノメーカーの使命」と伝統をつないできた。

多くのピアノ調律師の育成に当たってきた中田吉彦さん=10月中旬、掛川市のヤマハピアノテクニカルアカデミー
多くのピアノ調律師の育成に当たってきた中田吉彦さん=10月中旬、掛川市のヤマハピアノテクニカルアカデミー

電子化対応、後進に伝統つなぐ  1982年にヤマハ前身の日本楽器製造に入社した中田さんは、ピアノ事業部品質技術部長などを経て2012年、アカデミーの10代目所長に就任した。18年の定年退職後はシニアパートナーとして引き続き指導に当たった。
 世界的なピアニストに手腕を認められてきた調律師村上輝久さんが初代所長を務めたアカデミーは1980年設立。1年間かけて新規養成する「総合コース」に延べ2200人が学んできた。中田さんは2期生。当時はアコースティックピアノの国内生産が約39万台と絶頂期で、浜松市内にあった同アカデミーに100人以上が在籍した。ただ、ここ数年は年間15人程度の在籍にとどまり、今年の44期生は17人だった。
 中田さんに求められてきたのは、そうした時代の移り変わりへの対応だった。自動演奏や消音機能が搭載されたピアノの出現で調律師に求められる技能は増加したが「メーカーと電子機器とのマッチングの勉強を重要視した」と振り返る。
 ピアノ販売が伸長しているアジアなど海外の技術者養成の仕事も増え、今月もインドやインドネシア、シンガポールから日本の調律技術を学ぼうとする留学生を受け入れ、中田さんが指導した。掛川市出身のピアニストで、2018年浜松国際ピアノコンクール4位など活躍する今田篤さんを同アカデミー上級コースに招き、ピアニストからの意見を直接聞く機会を設けるなど、即戦力の育成にも努めた。
 「技術習得はもちろん、ピアニストとの信頼関係を築くことが重要な調律師は人間力も鍛えないといけない」と中田さんは後進に思いを託した。
 (浜松総局・大山雄一郎)

 <メモ>県内のピアノメーカーの調律師養成機関はほかに、河合楽器製作所が1961年に創設した「カワイ音楽学園」(浜松市中区)があり、これまで約2700人の卒業生を送り出している。今春に63期生12人が入学し、調律技術を学ぶ。卒業生は同社や楽器販売店などで活躍している。

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