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テーマ : 掛川市

【時評】真冬の札幌国際芸術祭 過去から未来「旅」体験(山口裕美/掛川市「現代アート茶会」芸術プロデューサー)

 札幌市で「札幌国際芸術祭(SIAF)2024」が開催中だ。2020年は新型コロナウイルス感染拡大で中止となったため、6年半ぶりの開催、会期は2月25日までとなっている。
 今回の大きな特徴は過去2回と違い、真冬の札幌での開催という点である。気候が大きなハードルとなるが、あえて挑戦している。開催前から地域連携のコラボレーションが行われ、作品の多くが、鑑賞型ではなく体験型の展示となっている点が好ましい。
 テーマとして掲げる「LAST SNOW」は、「LAST」に「最後」ではなく「この前の」「続く」といった意味を持たせている。日本語のサブテーマは「はじまりの雪」。
 総合ディレクターは、オーストリアのリンツ市在住で、アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ共同代表の小川秀明氏。六つの会場をストーリー仕立てにしていて、過去の100年と未来の100年の、合わせて200年にわたるアートの旅の意味を持たせた。例えば、道立近代美術館では1924年の作品から現代を生きるアーティストの新作を展示し、100年前から現在までを再考する。メイン会場となる未来劇場では、2024年から2124年へ向けての小川ディレクターからの大いなる問いとその問いを受け取ったアーティストたちが考えた未来への提示・物語などを作品として見て、体験できる。
 札幌市が2013年にユネスコ創造都市ネットワークにメディアアーツ都市として加盟したことを受けての、小川ディレクターの就任だろう。コンセプトや意味付けなど、市民にはわかりやすいのではないかと思う。
 お薦めの作品は、未来劇場にあったチェ・ウラムの「穴の守護者」を含めた生き物のような動きをするインスタレーション。ロボットや機械が自らの意思で動く「未来の風景」を表現した。モエレ沼公園に展示した脇田玲の作品は、NHK放送技術研究所の協力を得て、ラインアレイスピーカーから音が脳内を通過するような8K映像と音場合成技術のインスタレーション。札幌芸術の森美術館では、未来の冬の実験区として明和電機のナンセンスマシーン展を開催中だ(3月3日まで)。
 冬の札幌はラーメン、スープカレー、ジンギスカンなどおいしいものもたくさん。札幌出張予定の方、ぜひお出かけください。
 (掛川市「現代アート茶会」芸術プロデューサー)

 やまぐち・ゆみ 現代アートのアドバイザーとして、事業展開をする傍ら、東京・銀座でアートスペース・サロンを運営。「かけがわ茶エンナーレ2017」「神宮の杜芸術祝祭」など芸術監督を歴任。福島県出身。著書に「現代アート入門の入門」「観光アート」「芸術のグランドデザイン」など。一般社団法人アートパワーズジャパン理事。

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