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磐田市のレモン産地化 安定した販路確保が鍵【西部/記者コラム 風紋】

 磐田市は2024年度、JA遠州中央と連携し、レモンの産地化に乗り出す。主に茶生産者の新たな収入源として複合経営化を促す。高齢化や後継者不足などの課題が多い中、生産者の所得向上につなげ、地域農業の魅力を高める一手としたい。
 市は24年度一般会計当初予算案に、レモン栽培を支援する補助事業費1千万円を計上した。定植に向けた農園の整地・土地改良費に加え、本格的な収穫が始められるまでの未収益期間の負担を減らすため、農薬・肥料散布などの管理費も補助対象にした。産地化は茶生産が盛んな磐田原台地を中心に進める。
 茶業を取り巻く環境は厳しさを増している。茶価の低迷だけでなく、農薬や肥料など農業資材の価格高騰が生産者の利益を圧迫する。いわた茶振興協議会の稲垣明久会長(70)は「高齢化と後継者不足で離農する人もいる」と現状を危惧する。
 若い担い手を確保し、農地の荒廃を防ぐには「もうかる農業」の実現が欠かせない。レモンは冬場に収穫の最盛期を迎えるため、農閑期を生かせるメリットがある。レモンの収益を収入に上乗せできれば、伝統ある茶生産を守ることにもつながる。稲垣会長は「空いた農地や茶生産の隙間を生かせる」と産地化を前向きに捉える。
 市は30年までに栽培面積100ヘクタールを目指す。農林水産省の統計によると、21年度の国産レモン栽培面積は約740ヘクタールで、広島県が約4割を占める。目標を達成できれば国内の一大産地になれるだろう。
 着実に産地化を進めるには、安定した販路を確保し、一定の収益が得られる見通しが立つかが鍵となる。市は飲料メーカーとの契約栽培を模索している。実現すれば、市場出荷よりも高い価格での取引が期待できる。飲料メーカーとの連携のメリットは販売面だけでない。一定の品質を確保する栽培の技術・ノウハウ面での支援も得られるはずだ。
 レモン生産が軌道に乗ったら、余剰分で地域ブランド化につながる6次産業化商品を考えても面白い。市とJA、企業が連携して生産者のやる気を促し、持続可能な地域農業のモデルを確立してほしい。
 (磐田支局・八木敬介)

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