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大自在(3月25日)エモい選挙を

 放送法を巡る行政文書を取り上げた国会の大臣答弁でカタカナ動詞を聞いた。「テレビ朝日をディスるはずもございません」。侮蔑を意味する英語「ディスリスペクト」の造語で、公的な場面での浸透はいかほどだろう。
 2013年度の文化庁の国語に関する調査では7割の人が知らないと答えていた。この間に市民権を得たということか。使う言葉は変化し、発した側が思いもよらない反響を呼ぶことがある。言葉で事態が急転したケースを思い起こすと、「排除」「コシヒカリ」「死刑のはんこ」等々。「政治家は言葉が命」と腹に落ちる。
 4年に1度の統一地方選は、今週末に静岡、浜松の両政令市長選、翌週は全県で県議選が告示される。どんな言葉が選挙戦で飛び交うのか。告示間近、静岡市内で上映していた映画「劇場版センキョナンデス」を見た。
 ラッパーと芸人の2人が、昨年と一昨年の国政選挙中に試みた立候補者への突撃の様子を伝える。与野党を問わず、登場する女性候補たちの言葉が分かりやすく印象的だった。「選挙はエモい」。2人は上映後の舞台あいさつで、心揺さぶられる意味の英語「エモーショナル」から派生した新語で選挙を表現した。
 自らの取材を振り返ると、どの選挙も携わる人たちが織りなすドラマがあった。ただ、ドラマに関わる人や機会は限られている。地域に暮らす人こそが主役のはずなのに、舞台から遠い。
 有権者と選挙をつなぐのも言葉だ。候補者は練って磨き上げた言葉を届けることができるか。内容と熱量のこもった演説を聞きたい。

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