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社説(4月7日)ガザ戦闘半年 拡大を防ぎ停戦実現を

 イスラム組織ハマスによるイスラエル領への越境テロ攻撃で始まった戦闘は7日で半年。パレスチナ自治区ガザ地区で続くハマスとイスラエル軍の戦闘は停止どころか、戦火が中東全域に拡大する懸念すら高まっている。
 シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部の建物が1日、空爆された。イスラエルは公式に関与を認めていないが、イランとシリアは外交施設を標的にした攻撃は国際法違反だと強く非難している。イランがイスラエル領への報復攻撃に出ればイスラエルを支援する米国も巻き込んで戦火が拡大しかねない。
 国際社会は双方に自制を求め、戦火の拡大を防がなければならない。ガザ地区での戦闘も即刻停止させなければならない。特に米国は過激なイスラエルの行動を抑える責務がある。中東情勢が混迷を深めれば、11月の大統領選で再選を目指す米国のバイデン大統領にとって手痛い失点になるだろう。支援の見直しを警告しているが、もっと圧力を強める必要がある。
 ガザ保健当局によれば、今回の戦闘が始まって住民ら3万3千人以上が死亡した。100万人以上の住民も家を失い、深刻な食料不足から餓死者も出ていると伝えられる。社会インフラも破壊された。ガザ地区では人道支援物資の搬入も制限されている。
 非戦闘地域であっても支援物資を搬送中の食料支援団体の車列がイスラエル軍に攻撃されてメンバー7人が死亡した。これにはバイデン氏も非難声明を発表し、公然と同盟国を批判した。支援物資の搬入が困難となり、人道危機が深刻化する恐れがある。
 今回の戦闘の直接原因をつくったのはハマスだ。イスラエルに奇襲テロ攻撃を仕掛け住民ら約1200人を殺害、200人以上を拉致した。交渉で一部が解放されたが、まだ100人以上が人質になっているとみられる。さらにガザ住民を盾代わりにするハマスの姿勢も卑劣といえよう。
 だからといって無差別にガザ住民が犠牲になっていいはずはない。イスラエルが自衛の限度をはるかに超えているのは明らかだ。その結果、国際社会から非難され、孤立することを認識すべきだ。支援国の米国の責任を問う声も上がる。中東の親イラン組織などが米軍施設や米国の外交施設を襲うことが懸念される。
 国連安全保障理事会の非常任理事国として、日本は可能な限り停戦の実現へ努力したい。上川陽子外相は、ハマスの攻撃に職員が協力した疑惑で1月から停止していた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を再開すると表明した。ガザ地区の人道危機が改善の方向に向かうよう願いたい。

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