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「ヒノキ林を違法伐採」 所有者兄弟、静岡県を損害賠償請求で提訴

 静岡県の「森の力再生事業」で違法に山林を伐採されたとして、静岡市内の兄弟が県に約375万円の損害賠償を求める訴えを静岡地裁に起こしたことが10日、関係者への取材で分かった。

県が所有者の意に反して伐採した現場。植林体験の場として中学生が植林したこともあったという=2022年3月、静岡市葵区口仙俣
県が所有者の意に反して伐採した現場。植林体験の場として中学生が植林したこともあったという=2022年3月、静岡市葵区口仙俣

 3月29日付。伐採されたのは静岡市葵区のヒノキ林で兄弟の共有名義だった。訴状で原告側は、県の職員らは2021年7月、兄に対して「強度の列状間伐」と虚偽の説明をし、弟にはそもそも何の説明もしないまま、権利者の同意がないにもかかわらずヒノキ林を15メートル幅で「皆伐」したと主張。財産権を侵害した違法があると訴えている。伐採面積は約2ヘクタール、伐採本数は約6千本に上ったという。
 森の力再生事業は「森林(もり)づくり県民税」が財源で、県が「整備者」に補助金を交付する仕組み。原告側は、遅くとも20年5月の時点で県は共有林だと知っていたと指摘。県が林業家である弟には無断で伐採したのは、「皆伐」だと気づかれることを避けるためだったと批判している。その上で「補助金の審査においても、兄が伐採方法を正確に理解した上で同意しているのか慎重に確認する注意義務があったにもかかわらず、怠った」とした。
 整備者の静岡市森林組合は22年7月、兄弟に慰謝料として約512万円を支払った。県は「丁寧さを欠いた」としたが、法的な責任については認めなかったという。原告側は今回、森林組合の補償は全損害の6割にとどまるとして、残りの4割の補償を求めている。
 兄は取材に「県から誠意ある説明や対応がない」と強調。一方、県は「訴状が届いていないため、コメントできない」としている。

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