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社説(4月12日)韓国総選挙と日本 長期的外交戦略を練れ

 韓国総選挙は少数与党の「国民の力」が現有議席を割り込む敗北を喫し、最大野党「共に民主党」が過半数を大幅に上回る議席を獲得した。就任以来、日韓関係の改善に努めてきた尹錫悦[ユンソンニョル]大統領の求心力が低下するのは必至だ。尹政権の外交にも影を落とすだろう。日本政府は2027年に予定される次期大統領選での政権交代の可能性を意識せざるを得ず、日韓外交が膠着[こうちゃく]状態に陥る懸念がある。
 安倍晋三政権以降、日本の対韓外交はどこか諦めムードが漂う。上川陽子外相(衆院静岡1区)の顔が見えてこないのは、政府の優先順位が低い証左だろう。根底には、15年の慰安婦問題を巡る合意を文在寅[ムンジェイン]政権が事実上白紙化したことなどへの不信感がある。だが、ウクライナに侵攻したロシア、覇権主義的行動を強める中国、核開発を進める北朝鮮など日本周辺の情勢を見れば、日米韓の連携が重要なことは論をまたない。このまま戦略を欠いた対韓外交でよいのか。岸田首相が外交を「得意分野」と自負するなら、もっと長期的視点で戦略を練るべきだ。
 一院制の韓国国会は全300議席。共に民主党は系列を含め、改選前の156から175に増やし、国民の力は114を108に減らした。残る17のうち12は、元法相で娘の不正入学疑惑などで罪に問われた曺国[チョグク]氏の新党が獲得。尹政権への対決姿勢を鮮明にしている。野党側が200議席以上を確保すると、大統領が拒否権を行使した法案を再可決できるが、これは与党側が辛うじて回避した。
 尹大統領は地方の医師不足解消に向けて大学医学部の定員増を発表し、医療界の強い反発を受けて医療現場の混乱を招いたことや、夫人が知人から高級バッグを受け取った疑惑で逆風にさらされた。日本とは元徴用工問題への対応などで関係改善を図り、日米韓の安全保障協力を進展させたものの、野党から「日本に譲歩しすぎ」と批判も受けた。
 日本は尹政権の対応を歓迎しつつも、さらなる関係改善を図る意欲は乏しい。北朝鮮は韓国を「第1の敵国」と憲法に明記する姿勢を示して尹政権に揺さぶりをかけている。日韓連携の停滞は北を利する。日本には韓国の政治状況を冷静に分析し、仮に政権交代があっても後退しない強固な連携関係を、米国を交えて構築することが求められる。
 少子化など日韓共通の課題で知恵を出し合うことも関係を深めるのに有効だろう。また、韓国では40代以上の世代に反日感情が根強いが、日本文化が根付いた若年層はその傾向が薄いと言われる。若い世代が社会の中心になる時期を見据え、文化的交流を一層促進することも戦略の柱に据えることが不可欠だ。

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