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社説(4月13日)日米同盟の深化 国民へ丁寧な説明必要

 訪米した岸田文雄首相は米ワシントンのホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しで一致した。部隊の運用性向上を図るため、米軍と自衛隊の一体化が強まることになる。両首脳は、日米同盟が「グローバル・パートナー」として世界的な課題に協力して取り組むとアピールした。
 日米同盟は今後も日本外交の基軸であり続ける。とはいえ、従来の同盟関係は、日米安全保障条約に基づいて米軍が「矛」、自衛隊が「盾」とする役割分担が主体だった。一体運用が進むことで日本が矛の一部を務める可能性が強まる。さらにグローバルな課題解決に取り組むとすれば、米軍の世界戦略の一翼を担うことにならないか。
 同盟が質的に大きく変容しようとする中で、こうした重要案件が事前に国民的な議論を経ているとは言い難い。有事には両国が肩を並べて戦うといえば聞こえはいいが、実際には米軍の指揮下に置かれる懸念もある。国民や国会にしっかりと説明すべきだ。
 昨年11月、米空軍の輸送機オスプレイが鹿児島県の屋久島沖に墜落した際、防衛省は米軍の説明を受けて「不時着水」と発表した。操縦士が機体の制御を失っていたのは明らかで、墜落を墜落と言えない日本政府が、米軍と対等に向き合えるのか疑わしい。
 信頼できる最重要パートナーというのならば、日本の主権が制限されたままになっている日米地位協定をすぐに改定すべきだ。米軍基地が集中する沖縄の負担も見える形で軽減する必要がある。首相が国賓待遇を受け、米連邦議会で演説するなど見かけの華やかさを、そのまま外交成果と見ることはできない。
 日本は陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を2024年度末に発足させる。これに伴って連携の相手方となる在日米軍司令部は指揮・統制の見直しが必要となった。さらに日米による防衛装備品の共同開発を促進し、日本での米海軍艦船の大規模補修も進める。
 東シナ海や南シナ海で海洋進出を図る中国に対抗するためには、日米同盟の強化が必要なことに異論はない。中国の海洋進出を念頭に、日米はフィリピンを加えた3カ国の連携強化も目指す。日本は米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」との防衛技術協力も図る。
 覇権主義的な行動を強める中国を封じ込める体制が着々と進む。当然、中国の反発も強まる。ただ、戦後日本は一貫して平和国家を目指してきた。それを根本に置き、対話を重視した外交を貫いてもらいたい。米国一辺倒に偏らない独自の外交姿勢も必要だ。

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