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社説(4月6日)保護司の確保 若返り進む制度改革を

 罪を犯した人や非行少年の立ち直りを支える保護司の減少を受けて、制度の見直しを議論している法務省の有識者検討会は、新任時の年齢上限の撤廃や公募制の試行などを盛り込んだ中間報告を取りまとめた。ボランティアで活動している保護司に報酬制を導入する適否も検討する。年内に最終報告書をまとめる方針で、政府は来年の保護司法改正を目指す。
 保護司は政府が対策に力を注ぐ再犯防止に欠かせない存在だ。しかし、保護司は減り続け、高齢化が進んでいる。担い手の確保は重要な課題で、持続可能な制度にするためには、若返りを図る改革が求められる。
 保護司は刑務所や少年院を出た保護観察中の人などと定期的に面会し、生活上の助言や就労の援助などを通じて社会復帰を促し、再犯防止につなげる。身分は法相から委嘱される非常勤の国家公務員とはいえ、実質的には民間のボランティアである。
 昨年1月時点で、全国の保護司は定数5万2500人に対して約4万6千人。60歳以上が約8割を占め、70歳以上が4割に近い。現状のままでは減少に歯止めがかからず、将来的には制度の維持が難しくなるのは明らかだ。
 保護司になるには専門的な知識や経験、資格などは要しないものの、人格や行動に社会的信望がある、職務の遂行に必要な熱意や時間的余裕がある、生活が安定している―といった条件が保護司法に定められている。第一線を退いた人が多くなるのは必然だ。今後も高齢の保護司に大きく頼ることになろう。
 ただ、定年延長や再雇用が進んでいるため、新任の年齢を原則66歳以下とする制限は保護司確保の障害となっている。年齢制限の撤廃は現実を踏まえた対応だ。
 一方、現役世代の保護司を増やすのは容易ではない。現行制度では退任する保護司が後任を探し、保護観察所が法相に推薦するケースが主流で、公募制は新たな試みとなる。現役世代も意識した募集方法を考えなければならない。報酬制が若返りを進めるなら前向きに検討すべきだ。
 保護司の活動に関心があっても、かつて罪を犯した人などと面会することに不安を感じて二の足を踏む人も少なくないのではないか。自宅以外の面会場所の拡充、ベテラン保護司とペアを組んだ面会など不安をなくすための取り組みに一層力を注ぎたい。
 決して片手間でできる活動ではない。現役世代の保護司を増やすには、職場の理解と協力は不可欠だ。どうしたら仕事と両立できるのか、現役世代の声をできるだけ多く聞き、制度改革の参考にする必要がある。

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