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社説(4月5日)自民党の裏金処分 いまだ真相解明できず

 自民党は派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、党紀委員会を開き、事件に関係した安倍派と二階派の所属議員39人の処分を決定した。
 安倍派元座長の塩谷立元文部科学相(衆院比例東海)と参院の同派トップだった世耕弘成前参院幹事長を、党の規約に定めた8段階の処分のうち2番目に重い離党勧告とし、ほかの議員には3番目に重い党員資格停止や6番目の党役職停止などを科した。
 党総裁の岸田文雄首相に、一部議員の反発を買ってでも処分を断行することで国民に政治改革をアピールし、政権や党への逆風を弱めたい思惑があるのは間違いない。だが、多くの国民はこの処分に納得がいかないだろう。処分の前提となるべき事件の真相解明が中途半端で、疑念が解消されていないからだ。岸田首相が今回の処分で事件の幕引きを図るつもりなら、政治改革の決意はポーズでしかないことを自ら証明するようなものだ。この先、どう真相解明を進めていくのか、道筋を示さなければならない。
 決定した処分は塩谷、世耕両氏のほか、安倍派事務総長経験者の下村博文元文科相と西村康稔前経済産業相、高木毅前国会対策委員長は党員資格停止。松野博一前官房長官ら17人が党役職停止、17人が戒告だった。幹部歴などで処分期間に差をつけた。
 処分を巡り、党内に「基準が不明確」との不満が渦巻いている。真相が未解明なままでは、処分基準が曖昧になるのは当然だ。特に安倍晋三元首相が2022年4月に中止を指示した資金還流(キックバック)を、誰が再開すると決めたかや、還流がどのような目的でいつ始まったかは、衆参政治倫理審査会や党の聞き取りでも明らかにならなかった。これでは責任の重さを明確にできない。
 処分を前に39人中31人が弁明書を提出し、特に最も処分が重い塩谷氏は、処分の決定手法が「独裁的・専制的」だと強く反発した。塩谷氏の処分が妥当かどうかは別にして、処分される側が不信感を抱くのは無理もない。
 岸田首相は自らの派閥に政治資金収支報告書への不記載があり、党全体に責任を持つ立場にもかかわらず処分対象にならなかった。不記載額3500万円超だった二階俊博元幹事長も、次期衆院選への不出馬表明を理由に処分が見送られた。ご都合主義との批判を免れまい。
 事件を受けてことし1月に党内に設置された政治刷新本部は党改革の中間報告をまとめて公表したが、最終報告はどうするのか。岸田首相は真相を解明した上で報告に盛り込み、改めて処分をやり直すしか、国民の信頼を回復するすべはないと心得るべきだ。

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