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止まらぬ少子化 経済支援公約 若者に響かず【韓国総選挙 有権者のまなざし㊤】

 将来への不安から結婚や出産に後ろ向きな人が増え、急速に少子化が進む韓国。「国家消滅の危機」も叫ばれる中、与党「国民の力」と最大野党「共に民主党」は10日投開票の総選挙に向け、少子化対策を重点公約に掲げた。経済支援を軸に据えるが、有権者の視線は厳しい。「ジェンダー不平等や過当競争の構造が変わらなければ意味がない」。若者たちの訴えは切実だ。

韓国総選挙候補者の横断幕の前を歩く子ども連れの女性ら=3日、ソウル(共同)
韓国総選挙候補者の横断幕の前を歩く子ども連れの女性ら=3日、ソウル(共同)
韓国与野党の少子化対策公約
韓国与野党の少子化対策公約
韓国総選挙候補者の横断幕の前を歩く子ども連れの女性ら=3日、ソウル(共同)
韓国与野党の少子化対策公約


 出産を悲観
 「私たちの世代で韓国は終わりそうだね」。ソウルの女性会社員金昭淵[キムソヨン]さん(31)は独身の友人らと時々こんな冗談を言い合う。韓国の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの数)は世界最低水準で、昨年は0・72まで落ち込んだ。婚姻件数も10年前と比べて4割減。あえて結婚しない「非婚主義」が広まり、広告会社で働く金さんもその一人だ。
 家事育児は女性の役割という固定観念、子育て中に肩身の狭い思いをする同僚-。「出産で失うものが多いと悲観するようになった」と話す。
 国民の力は少子化対策を筆頭公約に位置付け、男性育児休暇の義務化や育休中の給与上限引き上げを約束。共に民主党も児童手当拡大や新婚夫婦向け融資などに巨費を投じる支援を挙げた。
 しかし出産に消極的な若者には響きにくい。韓国紙、毎日経済などが3月に実施した世論調査では、各党の公約について18~34歳の68%が「効果はない」と回答。受験や就職で過度な競争を経験し、国の将来に失望感を抱くようになったことが原因という。

 自分の人生
 「経済的な理由で子を持つのを先延ばしにしてきた」と明かすのは、今月末に出産を控える看護師の朴秀英[パクスヨン]さん(31)。2021年に結婚し、夫とソウル近郊に暮らす。韓国では結婚を機に新居を用意するのが一般的だが、不動産価格の高騰が結婚や出産を遅らせる要因となっている。朴さんも多額のローンを背負い、子育て費用の捻出に時間がかかった。
 目下の悩みは仕事と育児の両立だ。支援制度を利用するには「職場や周囲の顔色をうかがわなければならない現実がある」と表情を曇らせた。母親が子の面倒を見るべきだとの伝統的価値観は、自分のキャリアを諦めさせる圧力になる。
 子を持つことを選択するには「女性が自分の人生を断念しなくて済む環境づくりが必要だ」。そう話す朴さんは、おなかの子と共に投票所に行くつもりだ。
 (ソウル共同)
     ◇
 10日投開票の韓国総選挙は尹錫悦[ユンソンニョル]大統領の残り任期3年の行方を占う。有権者は政治に何を望むのか。思いを聞いた。

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