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障害者の移動入浴サービス 中山間地で“黄信号” 移動時間やコストに課題 家族切実「安定的な提供を」

 障害者の暮らしに欠かせない移動入浴サービスが、中山間地では十分に利用できない状況になっている。浜松市天竜区佐久間町奥領家の重度心身障害者、鈴木優太さん(32)は基本的に週1回、移動入浴のサービスを利用することで体の清潔感を維持している。市の定めでは週2回まで利用できるが、事業者が頻繁に訪問できないため、現在は毎週金曜と月1回の木曜が限度。昨年度は事業者側が打ち切りを検討した。障害者の家族は「移動入浴を必要とする人はいる。これからも利用したい」と安定したサービスの提供を求める。

浴槽で髪や体を洗ってもらう鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
浴槽で髪や体を洗ってもらう鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
週に1度の入浴で、リラックスした表情を見せる鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
週に1度の入浴で、リラックスした表情を見せる鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
浜松市天竜区佐久間町
浜松市天竜区佐久間町
浴槽で髪や体を洗ってもらう鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
週に1度の入浴で、リラックスした表情を見せる鈴木優太さん=2月下旬、浜松市天竜区佐久間町
浜松市天竜区佐久間町

 2月下旬の午後、移動入浴を手がけるスタッフらが一軒家に到着した。市中心部から天竜へ続く国道152号線を1時間以上運転した後、佐久間町へ入る。カーブの多い坂道を越えると、優太さんの自宅が見えてくる。
 優太さんは脳性まひ、知的障害、てんかん、四肢まひ、呼吸器障害がある。看護師含むスタッフ3人が浴槽やボイラーを準備し、優太さんの体調を確認した後、浴槽に移し、髪からつま先まで丁寧に洗った。優太さんの母成子さんは「入浴は健康を守るために必要なこと。それは誰でも同じこと」と話す。以前は週2で利用できていた。
 優太さんを担当する市内の事業者によると、往復で4時間程度かかる。普段は1日で7、8軒を回るが、鈴木さんの家に訪問する金曜日は4軒がやっと。赤字が続き昨年度で打ち切りを検討したが、サービスを委託する市が赤字分を穴埋めすることで継続が決まった。市障害保健福祉課の担当者は「週2回のサービスができるように、引き続き市内の事業者に働きかける」と話す。
 同課によると、移動入浴サービスを利用する障害者は天竜区で優太さんのみ。市内には事業者が九つあるが、利用者が中央区や浜名区に集中する。成子さんは「サービスの継続が決まり、事業者と市に感謝しているが、週2の利用をこれからも求めたい。中山間地域でも市の中心部と同じように十分利用できる仕組みを考えてほしい」と話した。
 (浜松総局・大沢諒)
浜松市、訪問診療費を補助  中山間地域の医療、福祉分野が抱える大きな課題は、スタッフの移動にかかる時間とコストだ。浜松市は2023年度から天竜区や浜名区引佐町の一部地域を対象とした訪問診療費を補助している。1度の訪問につき、5万7千円を補助する。
 同市中央区の小出眼科は昨年9月から月に1度、天竜区内の診療所で出張型の診療を実施している。同眼科が設けた専用車両で眼の症状を調べ、手術もする。同区春野町で今月5日、整形外科の出張診療も始まった。
 市健康福祉部の西崎公康次長は「地域住民から専門診療科の誘致を求める声と、診療に行きたい医師側から支援を求める声を以前から聞いていた。中山間地域の医療の支えにしたい」と話す。

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