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【迫る 御前崎市長選 市議選㊦】産業振興 誘致と起業が発展の鍵 4月7日告示、14日投開票

 3月下旬、中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)にほど近い池新田工業団地。その一角に広がる約2ヘクタールの区画に雑草が茂っていた。市は2010年、工業団地を拡張し分譲地整備に乗り出したが、翌年に東日本大震災が発生。工場建設を予定していた企業から計画撤回が伝えられ、今も手つかずの状態が続いている。

池新田工業団地の一角は雑草が茂る。奥には浜岡原発が見える=3月下旬、御前崎市池新田
池新田工業団地の一角は雑草が茂る。奥には浜岡原発が見える=3月下旬、御前崎市池新田

 市内の企業や家庭は国の原発立地給付金制度に基づき、電気料金の補助が受けられる。他にも優遇措置が用意されていて、製造業など大型設備を抱える事業者には立地メリットが大きい。しかし、震災に続いて発生した福島第1原発事故が空気を一変させた。
 震災後の13年間で市内に新規立地した用地面積1千平方メートル以上の事業所はわずか3件。貨物船が着岸する御前崎港を有し、30分以内で東名高速道に接続できる物流面の利点もくすみ、進出の流れは鈍化した。不動産開発に携わってきた市内の70代男性は「津波や原子力災害のリスクが障壁になっている」と指摘する。
 少子高齢化も顕著で、浜岡と御前崎の両町が合併した04年度に約3万6千人を数えた人口は現在、3万人まで減少した。同男性は「従業員の確保が見込めない地域に進出する企業は少ない。産業振興と人口対策を両輪として捉えて対策を講じる必要がある」と断言する。
 一方、明るい兆しもある。近年は起業の動きが広がっている。市商工会によると、市内の新規創業は23年度までの5年間で少なくとも63件あり、担当者は「今までにない傾向」と話す。市は数年前から島田掛川信用金庫と連携し、創業セミナーの開催や補助金制度の創設といった支援策を強化してきた。市商工観光課の山口敏徳課長は「地道な取り組みが成果として表れ始めた」と分析する。
 御前崎市は24年度、市制20周年を迎える。両町による合併当時、地の利を生かし県内有数の産業拠点としての躍進をもくろんだ。09年の静岡空港開港も追い風になると見込んだ。しかし、描いた姿にはまだ道半ば。災害リスクと向き合い、選ばれる産業誘致策を再構築するとともに、起業で生まれた若い芽を育てていくことが同市発展の鍵を握る。
 (御前崎支局・市川幹人が担当しました)▶御前崎市長選 開票速報ページ
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