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尊富士、110年ぶり新入幕優勝 右足の負傷押して出場

  大相撲春場所千秋楽(24日・エディオンアリーナ大阪)は新入幕で東前頭17枚目の尊富士が13勝2敗で初優勝を果たした。初土俵から所要10場所の制覇は最速。現行の優勝制度が確立した1909年夏場所以降では14年夏場所の両国以来110年ぶりの新入幕優勝となった。大相撲春場所で新入幕優勝を果たし、日本相撲協会の八角理事長(右)から賜杯を受け取る尊富士=24日、エディオンアリーナ大阪
 尊富士は14日目に負った右足のけがを押して出場し豪ノ山を押し倒した。平幕優勝は2022年九州場所の阿炎以来で37度目。幕尻優勝は00年春場所の貴闘力、20年初場所の徳勝龍、7月場所の照ノ富士に続き4人目。
 1差で追っていた平幕大の里は大関豊昇龍に下手投げで敗れて11勝4敗。豊昇龍は11勝目を挙げた。新大関琴ノ若は大関対決で霧島に屈して10勝5敗。5勝10敗の霧島は来場所を2度目のかど番で迎える。翠富士(焼津市出身)は7勝8敗で負け越し。
 尊富士(たけるふじ=本名石岡弥輝也)青森県五所川原市出身、伊勢ケ浜部屋。鳥取城北高―日大から22年秋場所初土俵。24年初場所新十両。同年春場所新入幕。優勝1回。殊勲賞1回、敢闘賞1回、技能賞1回。得意は突き、押し。184センチ、143キロ。24歳。
初土俵からのスピード初優勝
優勝アラカルト 新入幕優勝 優勝制度確立の1909年夏場所以降、14年夏場所の両国以来110年ぶり。
 ▽スピード優勝 初土俵から所要10場所は最速。これまでの最高成績は両国の11場所。年6場所制となった58年以降初土俵の力士では貴花田、朝青龍の24場所を大幅に更新(付け出しを除く)。
 ▽青森県出身 97年九州場所の貴ノ浪以来、11人目で38度目。最多は北海道の120度。
 ▽鳥取城北高出身 琴光喜、照ノ富士、逸ノ城に続いて4人目。
 ▽伊勢ケ浜部屋 初場所の照ノ富士に続き23度目。2力士による同部屋連続優勝は99年九州場所の武蔵丸、2000年初場所の武双山の武蔵川部屋以来。
 ▽学生出身 山錦、輪島、朝潮、出島、武双山、琴光喜、御嶽海、朝乃山、徳勝龍、正代、若隆景に続き12人目。日大出身では輪島、琴光喜に続いて3人目。
 ▽平幕優勝 22年九州場所の阿炎以来37度目。
 ▽幕尻優勝 00年春場所の貴闘力、20年初場所の徳勝龍、同年7月場所の照ノ富士に続いて4人目。

激痛の右足首「終わってもいい」13勝 最速10場所、平幕、幕尻…記録ずくめ  110年ぶりの新入幕優勝を決めた尊富士は、テーピングで固めた右足を引きずり気味で引き揚げてきた。目を真っ赤にし「この先、終わってもいいと思った。このけがで土俵に上がらなかったら男じゃない」。足首の激痛に耐え、大相撲史に残る快挙を成し遂げた。大相撲春場所千秋楽で尊富士(右)が押し倒しで豪ノ山を破り、110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした=24日、エディオンアリーナ大阪
 右で張って左を差し、右でおっつけて前進。土俵に詰まった豪ノ山を押し倒した。その瞬間、表情は柔らかくなり「何が何だか分からなかった。とにかく優勝を勝ち取りたかった」と安堵(あんど)感をにじませた。
 14日目の夜に病院から戻った際は「歩けなくて駄目だと思った」と休場が頭をよぎった。そんな中、兄弟子の横綱照ノ富士から「おまえならできる」と背中を押され、痛み止めを打って出場を決断。休場でも大の里が敗れれば優勝という状況だったが「人の勝ち負けを待っている場合ではない」と腹をくくった。
 鳥取城北高時代は左膝の故障に苦しみ、日大の入試の願書は入院中の病室で書いた。千秋楽の前日も病院で過ごすことに。苦笑いを浮かべ「自分はずっとけがをしてきた。でも、けがをして諦めたことは一度もない」。強い執念が結実した。
 大銀杏(おおいちょう)が結えない力士の優勝は初めて。八角理事長(元横綱北勝海)は「これで世の中の人にも尊富士の名が売れたのではないか」とたたえた。速攻が光った24歳の若武者がスター候補に名乗りを上げた。
三賞を総なめ 6人目  三賞選考委員会が開かれ、13勝2敗で初優勝した東前頭17枚目の尊富士が殊勲、敢闘、技能の全ての賞を受賞した。三賞総なめは2000年九州場所の琴光喜以来6人目。新入幕では1973年秋場所の大錦以来2度目の快挙。
 初土俵から所要10場所での受賞は若ノ花(後の初代若乃花)の9場所に次ぎ、史上2位の速さ(付け出しを除く)。
 西前頭5枚目で11勝を挙げ、入幕2場所目で最後まで優勝を争った大の里は2度目の敢闘賞と初の技能賞を獲得。他に三賞受賞力士はいなかった。
土俵を疾走 鋭い立ち合い「飛行機」  大詰めでアクシデントに見舞われながら歴史的な快挙を遂げた尊富士は184センチ、143キロと、今の力士では決して大きいとはいえない。今場所の幕内平均で身長はほぼ変わらず、体重は15キロ以上も軽い。それなのに土俵上を疾走するような出足は痛快。基本に忠実な技とスピードが原動力となっている。
 現役時代に強烈な左おっつけを誇った二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)は、はずやおっつけでの尊富士の手の使い方に着目する。「相手の肘や脇腹、脇の下を押す際、力が一番伝わるポイントを突いている。相手にとって最も嫌なところだから一撃で決め手になる」。確かに11日目の大関琴ノ若戦では劣勢から浅い左はずで形勢逆転。右かいなを絶妙に返して寄り切った。
 鋭い立ち合いも見どころの一つだ。速攻が持ち味だった武隈親方(元大関豪栄道)は「飛行機のよう」と形容する。「下から上へグーンと伸びながら当たる。さっと懐に入る速さと、前に出る力が素晴らしい」と絶賛し、モンゴル出身の元横綱日馬富士に重ね合わせた。今後はけがに強い体をつくれば、出世への視界はさらに良好となる。
水戸龍が十両制覇  十両は水戸龍(モンゴル出身、錦戸部屋)が12勝3敗で2度目の優勝を果たした。来場所は6場所ぶりの幕内復帰が確実となっている。
 序二段は元十両の栃丸(東京都出身、春日野部屋)が龍王(秋田県出身、二所ノ関部屋)との7戦全勝同士による優勝決定戦を制した。
 幕下は中大出身の風賢央(愛媛県出身、押尾川部屋)、三段目は長村(宮崎県出身、木瀬部屋)、序ノ口は千代大牙(大阪府出身、九重部屋)が13日目に7戦全勝で優勝を決めている。

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