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社説(3月26日)北陸新幹線延伸 被災地復興の後押しに

 北陸新幹線の金沢―敦賀間が延伸開業した。東京―福井間の所要時間は最短2時間51分で、開業前より約30分短縮されて首都圏がより近くなった。沿線では観光など地域経済への効果が期待される。
 能登半島地震からの復興につなげる観光支援事業「北陸応援割」も始まり、活況を呈しているようだ。地震で落ち込んだ旅行需要の回復が目的で、期間限定で宿泊代金が最大50%引きとなる。JR西日本は延伸開業直後の2日間は昨年の利用実績の1・2倍になったとしている。
 一方、石川県の奥能登地域を中心とする能登地震の被災地は依然として復旧途上だ。地震発生から間もなく3カ月となるが、約1万戸が断水したままで、8500人以上が避難生活を続けている。生活再建だけでなく、観光や農業など奥能登の産業復興にはまだ時間がかかりそうだ。
 延伸開業で人の動きが盛んになり、誰もが北陸の地域経済活性化を望んでいる。沿線がにぎわう陰で、被災地や被災者が置き去りにならないよう十分な配慮を求めたい。復興の後押しになってこそ、地域を挙げて延伸開業を心から喜べるようになるだろう。
 地震被害を免れた石川県南部のホテルや旅館も2次避難所として被災者を受け入れている。観光客受け入れで被災者がただちに退去を求められることはないが、観光客と同宿では肩身の狭い思いをする被災者がいるかもしれない。住宅修繕や仮設住宅整備での住まい確保が急がれる。
 福井県敦賀市まで伸びた北陸新幹線は、同県小浜市、京都市を経由して最終的には大阪まで延伸する計画。ところが、敦賀―新大阪間は8割がトンネル区間で、掘削による地下水への影響が懸念されている。反対運動などもあって着工の前提となる環境影響評価(アセスメント)が遅れているとされ、開業時期の見通しが立っていない。
 今年4月から始まる建設業の残業規制強化の影響で、作業員確保のハードルが上がった。その分、建設費の高騰は避けられない。敦賀での乗り継ぎの手間や東京一極集中の弊害を考えると、北陸と関西が新幹線で直結する意義は理解できる。ただ、国家財政が厳しく人口も減少する中で、巨額の事業費と時間をかける延伸が費用対効果で見合うのか、検証は必要だろう。
 延伸開業でJR西から切り離された石川、福井両県の並行在来線の運営も気がかりになる。両県の第三セクターが担うが、苦しい経営が予想されて先行きは険しい。利便性向上などで、どれだけ利用客増を図れるかが鍵になる。住民の足となる地域の公共交通網はしっかりと維持していかねばならない。

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