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浜松で日本語学ぶ女性4人 長引く避難に揺れる心 専門家「孤立防ぐ理解と支援を」 ウクライナ侵攻1年

 2022年2月のロシア軍侵攻で、ウクライナから避難した20~30代の女性4人がオイスカ開発教育専門学校(浜松市西区)で日本語の勉強を続けている。日本での就労も視野に、充実した学校生活を送るが、避難は予想以上に長期化。日常での孤立化を防ぎ、自立を後押しするため、地域の理解と息の長い支援が求められる。

日本語の勉強に励むウクライナ出身の避難学生=2月上旬、浜松市西区のオイスカ開発教育専門学校
日本語の勉強に励むウクライナ出身の避難学生=2月上旬、浜松市西区のオイスカ開発教育専門学校

 「悲しいことがあった」。22年7月にウクライナの首都キーウから避難したヴィーラさんが打ち明けた。今月上旬、浜松市内の観光施設でアルバイト中、高齢女性に「どこから来たの?」と尋ねられた。国名を伝えると、「戦争は早く終わってほしいね。ロシアもウクライナも両方悪い」と言われたという。
 「なんで? 私たちは領土を守りたいだけなのに」。バイトを終えて学校に戻り、涙ながらに教員に訴えた。
 ロシア軍の侵攻開始以降、日本国内では円安も重なり、燃料費や原材料費が高騰。物価高が家計を直撃している。北方領土問題など日ロ間の外交も絡む。1月には森喜朗元首相が都内の会合で「こんなにウクライナに力を入れていいのか。ロシアが負けることは、まず考えられない」と発言し、物議を醸した。
 オイスカ開発教育専門学校日本語科長の菅原敦夫さん(66)は、戦争長期化による欧米の「ウクライナ支援疲れ」の報道が気がかりだ。支援金の寄付や地域行事への招待といった学生に対する支援に感謝しながら、「日本への影響が深刻さを増すと、避難民に対する見方も変化しないだろうか」と懸念する。
 4人は学生寮で生活し、漢字の読み書きなどに励む。息抜きにカラオケ店に行き、日本の人気アニメ「エヴァンゲリオン」の主題歌を歌って盛り上がる。一方、具体的な就労希望や帰国意思は「まだ分からない」と声をそろえる。
 22年12月に入学したリアさんはウクライナ東部のドネツク出身。14年に始まった親ロシア派武装勢力とウクライナ軍の衝突で地元を離れ、キーウで1人暮らしをしていた。「あの時も最初は2週間くらいと思っていた。今回は何年になるのか」と表情を曇らせた。
 難民支援に詳しい静岡文化芸術大(浜松市中区)の下沢嶽教授(64)は「行政や市民グループが連携し、避難民と地域の交流機会を設け、孤立しないようにつながりを構築する必要がある。もちろん就業には企業の理解が重要」と強調する。
 (浜松総局・柿田史雄、日比野都麦)

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