テーマ : 芸能・音楽・舞台

心揺さぶる「直感」を写す 美術家・金原明音さん(静岡市清水区出身)【表現者たち】

 静岡市清水区出身、ドイツに渡って25年になる美術家金原明音[きんばらあかね]さん(52)が、初の凱旋[がいせん]展を地元のアート本専門店で開いている。縫い針、靴、触覚、たくさんの目―。体の一部や日常の断片が、白い紙に象徴的に描かれ、余白との緊張感は絶妙だ。

鉛筆とインクによるドローイングを発表する金原明音さん。「日々就寝前、頭に浮かぶイメージを写す」と話す=静岡市清水区のArt Book Shop りぶらりお(写真部・二神亨)
鉛筆とインクによるドローイングを発表する金原明音さん。「日々就寝前、頭に浮かぶイメージを写す」と話す=静岡市清水区のArt Book Shop りぶらりお(写真部・二神亨)
作品の多くは無題。左は「Needles」、右は「鳥とマスク」をモチーフとする
作品の多くは無題。左は「Needles」、右は「鳥とマスク」をモチーフとする
鉛筆とインクによるドローイングを発表する金原明音さん。「日々就寝前、頭に浮かぶイメージを写す」と話す=静岡市清水区のArt Book Shop りぶらりお(写真部・二神亨)
作品の多くは無題。左は「Needles」、右は「鳥とマスク」をモチーフとする

 「喜怒哀楽はもちろん、恥ずかしさ、みじめさなど、さまざまな直感をドローイングで表現したい」。心の奥底をくすぐられるような感情。その感情を表す小道具として物や動物を登場させるという。「見た人が1秒してフッと笑う」。同じ絵を見て怖いと思うか、面白いと感じるか。「作品は山の頂点に位置するイメージ。両義性を持つことが多い」
 多摩美術大で油彩を専攻していた頃、家では日々の気持ちをドローイングで描いた。「日本でドローイングと言えば素描だが、海外の美術雑誌を開くと、作品として取り上げられていた」。多くがドイツ人作家によるもの。先進的なアートシーンで挑戦したいとドイツを留学先に選んだ。
 ハンブルク芸術大で問われたのは、技術よりも「何を考えているか」。「表現したいものを見せる力に圧倒された」。2005年からは映像も手がけ、卒業後も欧州各地で発表を続けてきた。
 映像は、「一枚の絵」の延長にある「一つの空間」。個展で上映中の「犬も狼も[おおかみ]」はスイス滞在中に、建物の屋上を毎夕、定時に回り続けた。「月日とともに明るさが変わる。時間を意識することで時間に色を付けていく」と意図を語る。
 現在の拠点ベルリンには、世界中からアーティストが集まってくる。一方、文化的背景や宗教などを超え、人間の根本的な感情は変わらないとの思いを強くする。「アートは時間の比喩。過ごしてきた時間、これからの時間は季節とともに移動する渡り鳥のような存在か、生まれた川に帰る鮭のようになるのか」。心を揺さぶるものは何か問い続ける。
 (教育文化部・岡本妙)

 「犬も狼も、鶴も鮭も」展は11日まで、静岡市清水区の「Art Book Shop りぶらりお」で開催中。10日午後2時から、金原さんがアーティストトークを行う。

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