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静岡市舞台に映画、市民巻き込み 監督山本起也さん、故郷で製作「地域見つめ直す機会に」

 静岡市出身の映画監督山本起也[たつや]さん(58)が、地元静岡で映画の製作を進めている。これまで市井の人の暮らしを追ったドキュメンタリーや過疎化する地域を舞台にした劇映画を手がけてきた。「地域を見つめ直し、それぞれの生活を豊かにするきっかけに」と、市民を巻き込みながら準備している。

近藤麻美さん(右端)らと撮影場所を検討する山本起也さん(左端)=3月上旬、静岡市清水区
近藤麻美さん(右端)らと撮影場所を検討する山本起也さん(左端)=3月上旬、静岡市清水区


 熊本県天草市で撮影し、2021年に公開した「のさりの島」では、構想段階から約5年間現地に通って地元住民との関係を築いた。公開後に自主上映会やロケ地を巡るスタンプラリー、観光ツアーなど住民主体の取り組みが拡大。「狙ってできるものではないが、映画製作が、人口減少が問題となっている地域のコミュニティーを再び接着させられるのではないか」と可能性を感じたという。
 今作は18年に福岡県で起きた事件から着想を得た戸籍制度がテーマ。さまざまな縁で初めて故郷を撮影の舞台にすることが決まった。「市民目線の地域の魅力を盛り込みたい」と昨年9~12月、撮影現場の様子や映画館の現状を伝える全4回の公開講座を県立大で実施。延べ約250人が受講し、そのうち希望者に台本を配布して、通常フィルムコミッションなどを介して行う撮影場所の選定を含めて、製作スタッフの一員として関わってもらうことにした。
 「窓が大きいから、人の顔が撮りやすそうですね」「このアパートでは登場人物の闇の部分が際立ちすぎるかも」―。3月上旬、山本さんは近藤麻美さん(48)=静岡市駿河区=ら講座の受講者3人と撮影場所を決めるために同市清水区を巡った。近藤さんらは台本を読み込んで候補地を探し、所有者なども調べて案内した。「普段車で通過するだけの場所を撮影時期や人物の設定を考えながら歩いた」と近藤さん。「作品を見た時、提案した場所が使われていたらきっと泣いてしまう」と話した。
 25年1~2月に撮影、26年公開を目指す。山本さんは「公開後の経済効果だけでない影響を静岡にもたらすことができたら」と見据えた。
 (教育文化部・鈴木明芽)

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