テーマ : 芸能・音楽・舞台

さまー【サマー】 アカデミー生 熱い思い 布施安寿香【SPAC俳優 言葉をひらいて⑪】

 「SPAC演劇アカデミー」という高校生を対象とした教育事業があります。世界で活躍できる演劇人を育てるための事業が始まった3年前は、「できることがあれば…」くらいの距離感で遠くから見守っていたのですが、3期目となった本年度、講師として密に関わることになりました。

さまー【サマー】
さまー【サマー】

 講師のお話をいただいた時、何を教えることができるのだろうか、とすごく悩みました。私自身は何も知らないまま演劇の世界に飛び込み、ヒイヒイ言いながら現場で演技を身につけただけで、いまだにきちんとした理論はありません。そもそも演技には教えることのできない境地があると思っていたので、演劇教育に懐疑的な気持ちもありました。教える立場になることで、自分自身を研磨する時間が取られてしまうんじゃないかという不安もありました。
 しかし実際に始まってみると、アカデミー生と過ごす時間は「教える―教わる」という一方通行のやりとりではありませんでした。もちろん、私の方が知っていることは多いので伝える時間は長くなりますが、彼らの反応や言葉に耳を澄ませていると、たくさんの気づきが降ってきます。特に夏の集中講習で、悩み、苦しみ、それでいて喜びを失わずソロパフォーマンスに挑む彼らを見ていた時、初心に返るような、厳粛な気持ちになりました。
 ちょうど講習中に誕生日を迎え「ハッピーバースデー」を歌ってもらったのですが、それを聞きながら、彼らと出会えたことが今年一番のプレゼントだなと思いました。記録的な猛暑日続きですが、それ以上に熱い思いをたくさん浴びました。
 3月の成果発表まで、きっともっとたくさんの変化を見せてくれるんだろうなとワクワクしながら共に歩んでいます。

 ふせ・あすか 1980年生まれ。2006年よりSPACを中心に国内外で活動。主な出演作は「夜叉ケ池[やしゃがいけ]」「アンティゴネ」「桜の園」など。10月から多田淳之介演出「伊豆の踊子」に出演、県内各地で上演予定。

いい茶0

芸能・音楽・舞台の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞