テーマ : 芸能・音楽・舞台

「節目」の20回目彩る28の音色 朝霧JAM、1万6千人魅了

 老舗野外音楽フェスティバル「朝霧JAM[ジャム]」(実行委員会主催)が21、22の両日、富士宮市の朝霧アリーナと周辺で開催された。節目の20回目。大小二つのステージに国内外の28アーティストが集い、延べ約1万6千人(主催者発表)を楽しませた。
変拍子やトランペットを交えてジャンル分け不可能な音楽を奏でたOOIOO=富士宮市
 2001年の第1回から、出演者のジャンルの幅の広さが特色だったが、今年はそれが際立った。
 21日の幕開けを務めた7人編成のチョコパコチョコキンキンは中南米の音楽、アフリカのビート、沖縄のカチャーシーを取り入れた楽曲を連発。一方で、22日の最後を飾った韓国人DJナイト・テンポは日本の昭和歌謡や70、80年代アイドル曲をディスコビートに乗せて会場を踊らせた。この振り幅の広さが、20回目の朝霧ジャムを象徴していた。
力感あふれるドラムスと電子音のビートの融合を図ったサンキング
 2日間を通じて、ジャズを出発点にして音楽の拡張を試みる演奏家のステージが目立った。21日の白眉だった米国人ドラマー、カッサ・オーバーオールはコンガやボンゴを含む4人編成で変幻自在かつ強烈なリズムを押し出した。メンバーはたびたび楽器を持ち替え、オーバーオール本人も再三マイクを取って巧みなラップを聴かせた。
 同じ日に出たカナダが拠点のバンド「バッドバッドノットグッド」はステージ背後のスクリーンに抽象画のような映像を投影しながら端正なフュージョン音楽を聴かせた。22日の米シアトル在住2人組「サンキング」は管楽器のメンバーを加え、電子音と人力によるドラムで肉感的なグルーブを生み出した。
大スクリーンの映像と連動した演奏を展開したバッドバッドノットグッド
 単独で舞台に上がるソロアーティスト勢も強烈な印象を残した。21日の冥丁[めいてい]はサンプラーを操り、大海の嵐を思わせるノイズの音像から能のかけ声や古謡をサンプリングしたフレーズを浮かび上がらせ、聴く者に失われた日本の原風景を思い起こさせた。
 オーストラリア出身のマルチプレーヤー、チェット・フェイカーは22日に出演。2メートル四方にキーボードやギター、電子機器を大量に配置し、トラックを作ってから生演奏と歌を乗せるという難度の高いステージを展開した。
歌を中心に置いたオーソドックスなバンドサウンドを披露したくるり
 ギターアンサンブルが中心のグループも光った。21日は海外でも知名度の高い日本の4人組「OOIOO[オーオーアイオーオー]」が登場。予測不能な楽曲の展開と、ボーカルのYoshimiOによる、幼女の声にも猛獣の咆哮[ほうこう]にも聞こえる歌がスリリングだった。
 22日は英国からやってきた2女1男のきょうだいグループ「キティー・デイジー&ルイス」が出演。ギター、ピアノ、ドラムスなど担当楽器を変えながら、ブルースをはじめとした米国のルーツ音楽を基調とする楽曲を奏でた。心地よい“いなたさ”を感じさせる演奏は、英米の酒場を思い起こさせた。
 今回のフェスで最も多くの人が集まった日本のバンド「くるり」は、約20年前のヒット曲「ワールズエンド・スーパーノヴァ」でスタート。伊東市で録音した新作アルバム「感覚は道標」からの楽曲を交え、ギターロックの神髄を見せつけた。
 (教育文化部・橋爪充)

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