テーマ : 芸能・音楽・舞台

磐田の漫画家 寺田浩晃さんの作品、初の舞台化 劇団たんぽぽが制作

 磐田市の漫画家寺田浩晃さん(28)の作品が来年3月、初めて舞台化されることになった。浜松市東区の劇団たんぽぽが寺田さんの短編集の中から「くろいりんごときいろいそら」を原作にした演劇の制作に乗り出した。幼少期に家や学校に居場所がないと悩んだ寺田さん自身の思いが反映された作品。寺田さんは「子どもたちの心に一生残るものにしたい」としている。

舞台化される作品が収録された短編集を手売りする寺田さん(右から2人目)ら=2日、御前崎市民会館
舞台化される作品が収録された短編集を手売りする寺田さん(右から2人目)ら=2日、御前崎市民会館

 寺田さんは2018年に少年誌で漫画家デビューを果たした。だが、19年夏、治療法が確立していない指定難病「好酸球性胃腸炎」を発症。現在は闘病しながら制作に取り組んでいる。
 舞台化するのは、個性的な感性を持ち、周囲から浮きがちな男子小学生と、風変わりなギター弾きのおじさんの触れ合いを描いた作品。「全国の子どもに届けてほしい」。地元出版社が寺田さんの短編集「黒猫は泣かない。」を劇団に持ち込み、舞台化を提案した。
 漫画と演劇の表現方法の違いから、劇団には不安もあった。事務局長の久野由美さん(56)は「繊細なストーリーで漫画として完成されている。舞台で描ききれるのかと感じた」と振り返る。寺田さん本人から作品に込めた思いなどを聴き、人間性にほれ込んで舞台化を決断した。
 「いじめや難病を経験しても芸術に救われてきたと言ってくれた。言葉がすごくストレートだった」と久野さん。10月下旬に劇団員をオーディションし、配役を決めるという。
 寺田さん自身も原作を脚本に仕立て直すなど制作に携わる。「演劇は言葉の力が強い。言葉を大事に、せりふを起こした」と話す。初舞台の前に原作を読んでもらおうと、7月2日には同劇団の公演が行われた御前崎市民会館で、舞台化に向けた特別カバー版の短編集を来場者に手売りした。
 舞台は来年3月17日、浜松市浜北文化センターでお披露目する。その後は県内、全国へと公演を広げる計画だ。久野さんは「ほかの人と違うと悩む子どもたちが自分を少しでも好きになれるよう、舞台を通じて応援したい」と語る。
 (磐田支局・八木敬介)

クラウドファンディングで制作費募る 9月11日まで
 劇団たんぽぽは9月11日まで、漫画家寺田浩晃さん原作・脚本の舞台「くろいりんごときいろいそら」の制作費として、クラウドファンディング(CF)サイト「レディーフォー」で寄付を募っている。目標は300万円。
 同劇団はコロナ禍の影響で公演活動ができなくなり、一時は存続が危ぶまれる状態に陥った。国の助成金やクラウドファンディングなどで危機は乗り越えたが、コロナによる行動制限の緩和に伴って支援策が打ち切られ、経営難が続いている。
 CFを単なる制作費確保にとどめず、作品を全国の子どもたちに見てもらうためのサポーターを集める「挑戦」とし、協力を呼びかける。経営部長の豊島哲也さん(56)は「1人でも多く舞台づくりに関わり、全国の子どもたちに作品のメッセージを届ける一員になってもらいたい」と説明している。

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