教育文化部 鈴木明芽
すずき・はるが 静岡市出身。東京外国語大卒。2007年に入社し、東部総局、磐田支局、社会部、文化生活部を経て、教育文化部。出産を機に手芸を楽しんでいます。
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SPAC新作 小説「お艶殺し」 谷崎潤一郎原作 現代の恋模様に
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の新作「お艶の恋」が12月2日から、静岡市駿河区の静岡芸術劇場(グランシップ内)で上演される。谷崎潤一郎の小説「お艶殺し」を、現代に通じる恋物語に仕立てた。 SPACが世界の名作を連続上演する演劇シリーズ「秋↓春のシーズン」の2作目。裕福な質屋の一人娘お艶と奉公人の駆け落ちを描いた谷崎の初期作品を下敷きに、舞台を現代に移して、お艶とその恋のために殺される人らの魂を呼び起こす。阿部一徳さんらベテラン俳優6人が出演する。 演出は、SPAC作品に携わるのは2回目となる石神夏希さん(同市葵区)が手がけた。一般公演とは別に中高生向けの公演も行うことから「自分が中高生の
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野村萬斎監修「アクトシティ能・狂言」 伝統芸能、スペクタクルに 【動画あり】
狂言師野村萬斎が監修する「アクトシティ能・狂言」(浜松市、静岡新聞社・静岡放送など主催)が12月17日、同市中区のアクトシティ浜松で開かれる。600年超の歴史を持つ能・狂言を、現代劇などで用いる特殊効果や空間演出を取り入れて繰り広げる。萬斎は「こんなにスペクタクルなんだとお分かりいただけたら」と語る。 萬斎が映像の色味、幕1枚の素材まで吟味してつくり上げる「アクト―」は2011年に始まり、5回目を迎える。今公演に向けて最初に決めたという能の演目「紅葉[もみじ]狩[がり]」は、武勇で知られる平維茂と女性に扮[ふん]した鬼たちとの戦いを描く。作品の舞台である長野・戸隠山の秋錦を再現する。一方
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郷土研究、静岡県内高校生が活躍 社会科系部活減少傾向の中
郷土研究部や史学部といった高校の社会科系部活が全国的に減少する中、8月の「全国高校社会科学・郷土研究発表大会」で浜名高(浜松市浜北区)の史学部が最高賞を受賞するなど県内の生徒が奮闘している。研究テーマに対しフィールドワークを重ねる作業は、高校で必修科目となった「探究」の目的にも合致するとして、関係者は魅力や実績を再認識してもらおうとPRに力を入れている。 都道府県の高校文化連盟(高文連)に郷土研究などに関連する事務局があるのは静岡を含む10道県のみで、全国高文連には郷土芸能や日本音楽といった専門部はあるものの郷土研究に関する組織はない。文化部のインターハイと呼ばれる「全国高校総合文化祭」で
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帰郷し見えた自分の“役” SPAC「伊豆の踊子」出演・山崎皓司 「未来は明るいと伝えたい」
来年2月まで県内各地で上演する県舞台芸術センター(SPAC)の「伊豆の踊子」で、一人旅をする青年を演じている山崎皓司。東京で舞台をメインに活動していたが、2019年秋に地元掛川市に戻り、SPACの舞台に立ちながら俳優活動の一環として農業や狩猟などに取り組んでいる。物やサービスの対価、自然環境、人とのつながり―。「自分自身が学び、子どもたちに未来は明るいものだと伝えたい。これが自分がすべき“役”だと思っている」 俳優を目指し、多摩美術大への進学を機に上京。以降20年近く舞台俳優をしても、テレビや映画に出ていなければ周囲からは「役者の卵」と言われ続けた。ある時、時間を
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科学技術高・池谷さん 無線探査競技(19歳以下女子)で日本一 家族、仲間の支えに感謝
宮城県で10月に行われた全日本ARDF競技大会(日本アマチュア無線連盟主催)で、科学技術高3年の池谷仁美さん(17)=静岡市駿河区=が19歳以下女子の部門で優勝した。 ARDFはアマチュア無線の電波を用い、野山に隠された発信機を探査する競技。中学生から70代まで約100人が競った。池谷さんは3個の発信機を探し出し、1時間23分46秒でゴール。同年齢の男子を含めても2位相当の好記録だった。 高校2年時に3級アマチュア無線技士の資格を取り、今年4月に競技を開始。7月には高校生の大会で準優勝した。今回はこれまでの経験から、地図を正確に読むことに重点を置いたという。崖を登ったり、川に足を取られた
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SPAC 東京駅前で「マハーバーラタ」上演 非日常、ダイナミズム見せる
静岡県舞台芸術センター(SPAC)は10月19~23日、東京駅を背に、宮城聰芸術総監督演出の「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」を上演した。駅と皇居を結ぶ「行幸通り」に設けられた舞台で、観客を異空間にいざなった。 古代インドの叙事詩に含まれるロマンス「ナラ王物語」を平安期の日本に置き換え、歌舞伎や人形浄瑠璃の要素を取り入れて創作さされた祝祭音楽劇。2003年の初演以降、14年にフランスのアビニョン演劇祭、15年にロシアのチェーホフ国際演劇祭など海外でも上演し、高く評価されてきた。20年間、主要な役の俳優は変わっていない。今回は宮城総監督が総合ディレクターを務める東京芸術祭のプログラムとして披
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推し活で手芸身近に 縫いぐるみなど関連品、初心者や若者に発信
「推し活」を手芸のきっかけに-。生活スタイルの変化やファストファッションの普及などで手芸人口の減少が懸念される中、「推し」の姿を模した縫いぐるみ「推しぬい」作りなどでその魅力に触れてもらおうと、県内の手芸店が情報発信に力を入れている。手縫いで完成する動画を作ったり、貼るだけの商品を充実させたりして初心者や若年層への広がりに期待する。 9月、静岡市駿河区の生地のセレクトショップ「ララドレス心踊る手しごと店」が閉店した。デザイナーである鳥巣彩子さん(52)が2018年に開店。他にない生地のラインアップは愛好家を魅了したが、「働く女性が増え裁縫に時間をかける人が少なく、ミシンを持たない家庭が増え
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冬に光差す高揚感 オルガン奏者・大木麻理(静岡出身) 3日にリサイタル開催
静岡市出身のオルガン奏者大木麻理が3日、同市葵区の静岡音楽館AOIでリサイタルを開く。バッハによるオルガン作品の全曲演奏を目指した公演の3回目。 今回のテーマは「イエスを待ち望むバッハ」。クリスマスに向かう時期に、教会などで演奏される曲を中心に構成した。「この時期のドイツは午後3時ごろから暗くなり、だんだんクリスマスマーケットの明かりがついてにぎやかになる。もの悲しい気持ちに光が差してくるような高揚感のある曲を集めた」と話す。 バッハのオルガン作品は200曲を超える。オルガン奏者の多くが集大成的に全曲演奏に取り組む一方、「バッハは音楽家が必ず通る道。その壁を越えた時にどんな世界が見えるの
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「犠牲はいつも子どもたち」 富士出身のカメラマン渡部陽一さん 2014年からウクライナ取材
富士市出身で戦場カメラマンとして活動する渡部陽一さん(51)は、2014年のロシアによるクリミア併合をきっかけとした紛争以降今年の夏までに計13回ウクライナに渡り、取材を続けてきた。静岡新聞社のインタビューで28日までに、現地の様子を伝えるとともに「犠牲者はいつも子どもたちだ」と語り、平和への思いを強調した。 渡部さんは8月24日、22年2月の開戦から1年半、32回目となる旧ソ連からの独立記念日を迎えるのに合わせてウクライナへ向かった。同国東部、南部では、状況が分からないほどの激しい戦闘が続いている。欧米の軍事後方支援を受ける同国が戦力を強める中、「実績が重なるほど、ロシアが核兵器を
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CMで出合った「謎の職業」 強く印象に 戦場カメラマン(富士市出身)/渡部陽一【あのころの私⑤】
ロシアによるウクライナ侵攻は長期化し、イスラエルとパレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスの軍事衝突は激しさを増している。今、この瞬間にも各地で起きている紛争地帯の最前線に赴き、現地の状況を伝える戦場カメラマンの渡部陽一さん(51)=富士市出身=。世界の実情を伝えるという意志と、過酷な状況においても冷静に判断する力は、富士市で過ごした子ども時代に培われたという。 戦場をメインとしたフォトジャーナリストを具体的に目指すようになったのは大学の授業がきっかけですが、海外やジャーナリストという職業を意識し始めたのは、中学から高校にかけてだったと思います。 当時、ジャーナリストの落合信彦
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東京駅を背にSPACが代表作上演 異文化出合う祝祭劇
静岡県舞台芸術センター(SPAC)は19日、東京・丸の内の行幸通りで、東京駅を背景に、代表作「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」を上演した。宮城聰芸術総監督が総合ディレクターを務める「東京芸術祭」のプログラムとして、23日まで全5公演を行う。 古代インドの叙事詩をモチーフとし、平安時代を思わせる舞台で王と姫の運命を描いた作品。今回は出演者が東京駅から向かってくるかのように登場し、打楽器の生演奏とともに祝祭劇を繰り広げた。あらゆる場所から鑑賞できる特設ステージに「立見エリア」も設けられ、周辺のオフィスで働く人や訪日客も足を止めて見入っていた。 宮城総監督は「異文化の出合いによってどのような化
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静岡県民が舞台劇創作 「ラウドヒル計画」10年 勝山康晴総監督「何かがうごめく舞台に」
静岡市民文化会館(同市葵区)を拠点に県民が舞台劇を創作するプロジェクト「ラウドヒル計画」の新作「GET OVER イエヤススマイルフォーユー」が21、22の両日、同館で上演される。プロジェクト発足から10年の節目に、役者、スタッフ総勢100人超の大型作品に挑む。総監督を務める勝山康晴(藤枝市出身)は「金銭では換算できない、何かがうごめいているステージを見せたい」と言葉に力を込める。 舞台は現代。平凡な生活を送っていた新シズオカ高校の教師、若竹アオイはある時から毎夜、同じ夢を見るようになる。イエヤスを名乗る少女がシズオカを守るため奮闘する夢。しばらくして、「一緒に少しだけ未来を変えてみません
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白井貴子の「FLOWER POWER」、アナログ盤で11月発売 焼津で製造
1980年代に「ロックの女王」と呼ばれたシンガー・ソングライター白井貴子が11月1日、85年に発表したアルバム「FLOWER POWER」をアナログ盤で発売する。9月上旬、焼津市のソニー・ミュージックソリューションズ大井川プロダクションセンターを訪れ、レコードの製造工程を見学した。 「英知に感謝」白井さん、製造工程を見学 同所は69年にレコードの生産を開始したが、CDの普及に伴って89年に量産を終了。2018年に再開し、24時間体制で稼働している。年々プレス機を増やし、24年には現在の倍量の生産体制が整うという。 白井が同所を訪ねるのは2回目。初めて訪れた08年は、廃CDをリサイクルする
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焦り禁物、今からが伸びしろ 中学受験テーマに新著 秀英予備校講師鈴木さん
秀英予備校清水本部校(静岡市清水区)の講師鈴木孝弘さん(46)が、中学受験をテーマにした小説「小さな挑戦者たち~サイコウの中学受験~」(ポプラ文庫)を出版した。受験生と親、家庭教師の3者のリアルな悩みや感動を描いたほか、さまざまな場面での効果的な勉強法も盛り込んだ。県内では年明けの入試に向けて受験ムードが高まる時期。鈴木さんは「受験は実際には厳しいことが多いが、物語を通して客観視したり、共感したりしてもらえたら」と思いを込める。 「騎月孝弘」のペンネームで小説を執筆し、6作目で初めて本業に関わるテーマに挑んだ。舞台は中学受験が過熱する首都圏。東京大卒の家庭教師が、志望校も学力も家庭環境もさ
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静岡人インタビュー「この人」 全国高校ARDF競技大会のクラシック144MHz帯競技女子個人の部で準優勝した 池谷仁美さん(静岡市駿河区)
アマチュア無線の電波を使って、山野などのフィールド内のポイントを探査するARDF競技を4月に始め、7月の全国大会で好成績を収めた。科学技術高ロボット工学科3年生。この夏まで機械工作研究と電子物質工学研究無線班の2部活に所属した。17歳。 ―全国大会を振り返って。 「県大会は制限時間に悔しい思いをしたのでとにかく時間を気にした。猛暑の中での大会だったので体力が心配だった。部活動として競技に打ち込んでいる人たちの中で記録が残せたので、信じられない気持ちだった」 ―無線との出合いは。 「ボーイスカウトに所属していた縁で中学生の時から無線に興味があり、高校2年の時に3級アマチュア無線技士の資
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SPAC「秋→春」シーズン 10月幕開け 「伊豆の踊子」演出 多田淳之介
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「秋→春のシーズン」は10月、川端康成の小説を原作とした「伊豆の踊子」で幕開けする。物語の舞台である伊豆地域の映像を取り入れ、観客がその地を訪れたくなるよう脚色した作品。演出を手がけた多田淳之介は「地元の方々が知っているようで知らない景色を盛り込んだ。地域の魅力の再発見につながれば」と期待する。 現地映像加え新鮮な印象 孤独から逃れるために伊豆へ一人旅に出た青年が、道中で出会った旅芸人一座の踊り子に淡い恋心を抱き、心がほぐされていく―。川端が伊豆を旅行した際の実体験が下敷きになっている。単行本や文庫本が複数社から出版され、美空ひばりや吉永小百合
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収蔵品の写真撮影OKに「本物と向き合うきっかけに」 静岡県立美術館
静岡市駿河区の静岡県立美術館は、18日まで開催中の収蔵品展「美術館のなかの書くこと」を皮切りに、個人利用に限って同館収蔵品の写真撮影を可能にした。 同館はこれまで、著作権の観点のほか、来館者や作品の寄託者への配慮など主に「管理上の理由」(同館)で収蔵品の撮影を禁止していた。しかし近年、国内外で展示品の撮影ができる美術館が増えていることから、数年前から対応を検討。スマートフォンでの撮影が気軽になり、案内板や撮影可否の表示を設置することで、作品を鑑賞する環境を保てると判断した。寄託品が多い展覧会では寄託者の要望などを踏まえ一律不可とする場合もある。 開催中の「美術館のなかの書くこと」では、フ
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静岡市美術館「ブルターニュ展」講演会 監修者 千足さんが魅力解説
フランス北西部、ブルターニュ半島の自然や文化を描いた作品を集めた「カンペール美術館所蔵 ブルターニュの光と風 フランス 神秘と伝統の地へ」(静岡市、静岡新聞社・静岡放送など主催、清水銀行特別協賛)を開催中の静岡市葵区の市美術館で9日、記念講演会が開かれた。展覧会を監修した成城大名誉教授で広島県立美術館館長の千足伸行さんが、ブルターニュで生まれた絵画について語った。 千足さんは19世紀から20世紀にかけて近代化が進む中、「画家たちは過疎地と見られていたブルターニュの風俗や風景を求め、その魅力を伝えた」と説明。作品を示しながら、漁業を中心とした人々の暮らしぶりや信仰と結びついた行事、民族衣装な
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入場1万人達成 静岡県立美術館の企画展「糸で描く物語」
静岡市駿河区の県立美術館で開催中の企画展「糸で描く物語 刺繍(ししゅう)と、絵と、ファッションと。」の入場者が8日、1万人に達した。 節目の入場者となったのは浜松市浜北区の木俣千秋さん(72)。兄の松村俊夫さん(77)=静岡市葵区=らと作品を見て回り、「美術館に刺しゅう作品を展示するのは珍しいと思い、楽しみにしていた。民俗衣装が美しく見応えがあった」と話した。記念品として、図録などが贈られた。 企画展は18日まで。東欧の伝統衣装や絵本の挿絵、オートクチュールの装飾など、時代や地域を越えて発展してきた刺しゅう作品約230点を紹介している。関連イベントとして、9、10両日に同館屋外にクラフト
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チーム担任制導入進む 教員、児童生徒や保護者 双方に利点
学級担任を固定せず、学級での児童生徒の指導や事務的業務を複数の教員がローテーションで行う「チーム担任制」を導入する学校が全国で増えている。県内でも一部の私立校が取り入れている。児童生徒や保護者にとって相談しやすい教員を選択できるという利点がある。学校側は多角的な視点で対応することで子供の変化に気付く機会が増えるだけでなく、教員の負担軽減やOJT(職場内教育)による若手育成なども期待されている。 浜松学芸中・高(浜松市中区)は2020年度に取り入れた。「以前から、生徒や保護者から担任との相性を『当たり』『はずれ』で表現されることにもどかしさがあった」と高校の内藤純一校長。複数の担任がいれば