テーマ : 島田市

スマホ・ネットの家庭内ルール どうしてる?① 保護者の声、子どもの意見【賛否万論】

 子どもたちが家庭内で私的にスマートフォンやゲームなどの情報端末を利用する際のルールはどうなっているでしょうか。県教委が行った家庭教育実態調査の「スマホ、ネット、ゲームをどのように利用させたら良いか」の項目では、小中学生を持つ保護者の半数近くが不安や悩みを抱えていることが明らかになりました。県教委の2022年度学校対象調査によると、県内の小学生は約4割、中学生では8割、高校生ではほぼ全員がスマホを所有する時代です。子どもたちにとって、同世代の友人たちとの欠かせないコミュニケーションツールで、自分だけの“聖域”として貴重な居場所である一方、学習や健康への影響、犯罪に巻き込まれるリスクなど負の側面も顕在化しているインターネットの世界。保護者としてどこまで利用に関与すべきでしょうか?
 (社会部・薬袋貴信)
スマートフォン等によるインターネットの利用について、保護者とルールを話し合っているか。
 欠かせないツールではあるけれど… 利用方法、半数が不安
 「小6の時に自分用のスマホを買ってもらった当初は親と『課金しない』『使用時間は午後10時まで』という約束があったけど、今は何も言われない」。島田市の高校3年生の杉森愛亜さんは現在の利用状況をこう話しました。インスタグラムを始めた時は親が自身のアカウントをフォローしていたが、今では「子どもであっても個人情報なんでブロックしてます」と笑います。ゲームアプリなどで課金することはなく、自分なりの節度を持ってスマホと付き合っている自覚があるので、生活態度が乱れたり学校の成績が下がったりしない限り、使い方について親から指摘されることは特段ないそうです。
子ども向けスマホを選択する際に重視する点
 「きょうだいがいるとルール設定が難しい」とこぼすのは高1、中2、小6の子を持つ焼津市の桜井彩乃さん(42)。利用に慣れ、自分たちで日常生活や学習とのバランスを学べるよう、全員中学入学前からスマホを持たせました。子どもたちのスマホ利用時間やどのアプリを使用しているかなどを親が把握できるファミリーリンク機能を使い、ルールが守られているかつぶさにチェックしているので、仮にルールが破られても話し合ってルールの再設定ができていると言います。とはいえ、下の子になればなるほど、上のきょうだいとの違いに不公平感を訴えられるケースもあり、対応に苦労することもあるそうです。
 「不登校やひきこもりの子どもたちにとって、オンラインの世界は大切な居場所。ネット依存は心配だけど規制のかけ過ぎも疑問」と話すのは、磐田市で不登校の児童を支援している言語聴覚士の石野朋子さん(43)。新型コロナウイルス禍でオンライン授業が広がり、学校に通っていない子どもたちでも地域の同級生と容易にコミュニケーションを取ることができるようになりました。石野さんは「スマホやオンラインゲームを通した交遊は子どもたちの貴重な学びの場。時にはけんかしたり仲間と助け合ったりしながら、子どもなりに社会参画している」と強調しました。
 袋井市の小3女児の家庭では、宿題や家の手伝いなどやるべきことをやれば、ゲームをする時間や使用するソフトについて決め事はないそうです。人気のオンラインゲームでは、アイテムのやりとりやユーザー同士がつながる「フレンド」機能で見知らぬ人たちと気軽にやりとりしていましたが、学校でインターネットに関する授業を受けた後、「知らない悪い人といつの間にかつながってしまうかもしれない」とこれまで何げなく遊んでいた怖さに初めて気づきました。
 浜松市中区の山元塁さん(51)は、子どもが交流サイト(SNS)を巡りトラブルになりかけました。スマホ契約時に利用時間などを制限するフィルタリングをかけていましたが、子ども自身が解除。深夜遅くまでスマホ漬けの日々になりました。しかし、SNSでつながった直接会ったことのない“友人たち”の「いいね」を欲しがり交流を続ける中で、必要以上に個人情報を迫られたことを機に、身の危険を感じた子どもが家族に助けを求めました。家族で話し合いを重ね、「スマホを自室に持ち込まない」などルールを徹底することで事なきを得ました。「子どもを信じ、粘り強く説得を続けた。ありきたりだけど、家族間の会話は大切」と振り返ります。

 購入時は「見守り」重視
 インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)=東京都=が9月末に発表した「青少年のネット利用の現状と保護者の意識に関するアンケート」によると、高校生以下の子どもにスマホを購入・選択する際に重視する点として①端末・通信費を含む値段②セキュリティー担保(ウイルス感染の可能性が低い)③課金や利用状況が確認・制御できる-が上位を占めました。保護者が家計負担を気にしつつ、見守り意識が高いことがうかがえます。
 一方で、保護者によるネット利用の管理法「ペアレンタルコントロール」の一つ「フィルタリング」を高校生以下に利用している割合は約5割にとどまっています。特に高校生では極端に使用率が下がります。フィルタリングの主な使用目的に「アプリのダウンロード、課金などのコントロール」や「有害情報アクセスの遮断・制限」がありますが、高校生になるとある程度の使用権限を本人に委ねる傾向が見て取れます。
 県警人身安全少年課によると、青少年のSNSに起因する被害は今年8月までに32人(高校生18人、中学生11人、小学生3人)と昨年同時期と比べ4人増えています。多くが淫行や児童ポルノ、売春などに巻き込まれ、被害者の9割がフィルタリングを利用していませんでした。子どもたちの生活必需品となったスマホは安易な情報収集ができるため、特殊詐欺や闇バイト、覚醒剤の売買の温床などにもなり、県内でも摘発例が出ています。

 次回は有識者インタビュー
 次回は同じテーマで有識者のインタビューを掲載します。子どもたちをネット被害・加害から防ぐ家庭内のルール設定、フィルタリングなどの重要性を認識するとともに、保護者が最低限のネット知識、いわゆる「ネットリテラシー」をどのように習得したらよいかを教えてもらいます。

 ご意見お寄せください
 あなたの家庭のスマホやネットのルールはどうなっていますか? どこまで関与すべきだと考えていますか? 幅広い視点の投稿をお待ちしています。
 宛先は〒422―8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「賛否万論」係、<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>

いい茶0

島田市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞