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災害関連死防止へ、支援人材育成 内閣府が島田などでモデル研修 避難所生活改善、心情理解も

 避難生活の長期化などによる災害関連死を防ぐため、内閣府が避難所での生活環境改善を支援する人材「避難生活支援リーダー・サポーター」の育成を進めている。2023年度は島田市など全国10市町でモデル研修を行った。居住空間やトイレなどの物理的な環境を向上するだけでなく、被災者の心情を理解し、課題を把握するスキルも学ぶ。24年度以降は、実施主体を都道府県や市町村へと拡大する方針だが、講師を担う人材の確保などに課題もある。

避難所の課題の改善方法を学ぶ参加者=12月中旬、島田市
避難所の課題の改善方法を学ぶ参加者=12月中旬、島田市


 12月中旬、島田市の初倉小で行われた研修に、自主防災組織役員や防災に関心が高い女性ら約40人が参加した。発災から約1カ月たった想定で、体育館に食事スペースや寝床などを再現。参加者は仕切りを設置したり、掃除係を決めたりしてプライバシーへの配慮や衛生状態の改善を図った。講師は「抱える問題の背景の理解が大事」「被災者と一緒に改善に取り組む意識を」などと助言した。
 災害関連死の発生率は最大避難者数と相関関係があるとされ、大規模災害では避難所生活が1カ月以上に及ぶこともある。内閣府は関連死ゼロを目指し、劣悪な生活環境によるストレス緩和などの問題を解決する方法を21年度から検討してきた。避難生活支援リーダー・サポーターの育成をその第一歩と位置付ける。
 一方、県危機情報課の担当者は「講師を務められる人材は限られている」と課題を挙げる。内閣府主催の研修では、被災者支援の経験が豊富なメンバーが講師陣を務めた。講師の一人で、認定NPO法人レスキューストックヤードの浦野愛常務理事(47)は「調整力や他団体とのつなぎ役となり、講師を務められる人材が各県に最低1人いるのが望ましい」と強調する。
 県内ではふじのくに防災士や被災者支援コーディネーターなどの防災人材育成がすでに行われている。内閣府の担当者は「実施団体向けの研修運営マニュアルの作成とともに、各県の既存研修と重複する部分がある場合は、合理的に実施できるよう検討していく」と述べた。
 (社会部・中川琳)

住民主体運営 意識は不十分
 内閣府の避難生活支援リーダー・サポーターは、基本的な避難所運営に加え、課題に気付く力や被災者の心情に焦点を当てるなど、高いレベルの知識やノウハウが求められる。ただ、県内では避難所運営訓練の実施率は5割に届かず、住民主体で運営する意識も十分とは言えない。
 研修を受けた島田市の金谷栄町自主防災会の北川彰伯さん(66)は「多様な視点で改善策を話し合えたのはいい経験」とする一方、「地元で同じようにできるだろうか」と不安を口にした。袋井市から参加した相羽真由美さん(50)は「図上だけでなく、リアルな避難所運営訓練も必要」と地域での訓練を振り返った。
 島田市危機管理課の杉本正晴課長によると、市内39カ所の指定避難所で運営マニュアルの整備ができているのは半数程度。「住民の理解が進んでいるとは言い難い」と現状を説明する。
静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「高齢者らに配慮したスペースの配置など、まずは基本のレベルを確認してほしい」と呼びかける。「環境改善は必要だが、住民の手でできる範囲でなければ、定着や主体的な取り組みとするのは難しいだろう」との見方を示した。

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